いざ技と知の金脈へ!
次世代テクノロジーを求むイノベーター向けメディア

国内初!完全停電を想定した「宿泊型災害体験キャンプイベント in 京丹波町」レポート

国内初!完全停電を想定した「宿泊型災害体験キャンプイベント in 京丹波町」レポート

 照明・空調・スマートフォンの充電......などなど、現代社会は生活のあらゆる分野において電気を必要としています。こうした状況下で、もし完全停電が起こってしまえば、その影響は甚大なものとなるでしょう。

 そこで、「国境なき発電所 in 京丹波町 実行委員会」(※1)は、国内初(※2)の「宿泊型災害体験キャンプイベント in 京丹波町」を、9 27 日(土)~28 日(日)に実施しました。本記事では、同イベントのレポートをお届けします。

1:「一般社団法人日本災害救援活動士協会」と、「NGO 国境なき発電所」の連合組織。マクニカは、特別協賛社として参画。

2:自社調べ

イベント概要

 今回の会場となったのは、「京都府京丹波町下山クラベシ」というキャンプ場でした。

2025_1009_saigaitaiken_01.JPG
▲京都の山間部にある、広大なキャンプ場の一部。参加者は、ここにテントを張ってキャンプしました。当日は晴天で空気もおいしかったです。

 イベントには京丹波町に在住の10世帯の家族が参加。大人だけでなく、多くの子どもたちの姿もありました。全体のプログラムとしては救命講習やロープワーク講習といった防災イベントの見学および体験のほか、マクニカによる小型熱分解装置「KASHIN INFINITY®」の稼働および発電デモ、サーキュラーエコノミーの重要性の解説などがおこなわれました。

2025_1009_saigaitaiken_02.jpg

2025_1009_saigaitaiken_03.jpg
▲実際のスケジュール。宿泊型イベントのため、2日間にわたって実施されました。

2025_1009_saigaitaiken_04.JPG
▲マクニカのサーキュラーエコノミー事業部が取り扱う、ソリューションの紹介パネルを設置。熱心に読んでくださるかたもいました。

開会式

 やがてイベントが開始時刻を迎え、開会式がおこなわれました。

2025_1009_saigaitaiken_05.JPG
司会進行を務めた、「国境なき発電所 in 京丹波町」実行委員会の事務局長・宮本 正一氏(第 54 代寝屋川市議会議長) 

2025_1009_saigaitaiken_06.JPG
「国境なき発電所 in 京丹波町」実行委員会の代表者・島﨑 雄次郎氏。「今回のイベントを開催できることを嬉しく思います。ぜひ楽しんでください」と語りました。

2025_1009_saigaitaiken_07.JPG
京丹波町長・畠中 源一氏。同氏は「京丹波町は比較的に災害が少ない町」としつつも、「近年は全国各地で大規模な災害が発生しており、非常時に備えた対策の重要性が増している」と説明。

さらに「今回のイベントがいざというときの支援強化につながることや、参加者同士が密にコミュニケーションを図り、有意義な時間を過ごせることを期待する」として、あいさつを結びました。

2025_1009_saigaitaiken_08.JPG
▲マクニカからは、サーキュラーエコノミー事業部の事業部長・脇坂 正臣が登壇。資源循環の現況や、今回のイベントの趣旨を解説しました。

2025_1009_saigaitaiken_09.JPG
鹿児島県からはるばる駆けつけ、あいさつを締めくくった薩摩川内市議・今塩屋氏。「地元では災害が多いため、このイベントでの体験を持ち帰りたい」と意気込みを語りました。

ペットボトルキャップから油を作ろう!

 開会式が終わり、いよいよイベントの各プログラムの始まりです。今回のイベントは完全停電が起こった場合を想定したものであるため、「緊急時に使える電気を発電する」という内容が含まれていました。そこで活躍するのが、イベント会場に設置された小型熱分解装置「KASHIN INFINITY®」です。

2025_1009_saigaitaiken_11.JPG
▲「KASHIN INFINITY®」。「小型熱分解装置」とはいいつつも、稼働時には大人がよじ登って作業をする必要があるため、けっこうな大きさがあります。


 「KASHIN INFINITY®」は、一般的に廃プラスチックと呼ばれる固形物を無酸素状態で間接的に加熱することで蒸気化し、水冷して油に変えることができます。

 抽出直後はガソリン相当・軽油相当・灯油相当・重油相当が混ざった状態になっていますが、これを「KASHIN INFINITY®」で再度処理すれば、ボイラーや発電機などのさまざまな機械で利用可能になります(この機械についてより詳しく知りたいかたは、こちらの記事もあわせてご覧ください)。

 

①投入編

 今回、マクニカは事前に住民や町役場と協力して、ペットボトルのキャップ(廃プラスチック)を収集していました。

2025_1009_saigaitaiken_12.JPG
▲集まったペットボトルのキャップ(約30kgぶん)。


 これらを「KASHIN INFINITY®」に投入し、生成したガスと混合油で発電機を動かすことで、携帯電話やパソコン、電気バイクの運行、電化製品などによる食事の提供をおこなう......というのが、企画の趣旨です。

 本プログラムの冒頭では、まずマクニカの脇坂からサーキュラーエコノミーについての解説がおこなわれました。

2025_1009_saigaitaiken_13.JPG
▲参加者に現代社会におけるゴミ処分の実態や資源循環の重要性、そしてペットボトルのキャップが油に変わるまでの仕組みなどを解説。皆さん、熱心に耳を傾けていました。


 解説が終わり、いよいよペットボトルキャップを機械に投入することに。今日のために集まってくれた子どもたちも、一生懸命チカラを貸してくれました。

2025_1009_saigaitaiken_14.JPG
▲みんなでペットボトルキャップをどんどん投入!

2025_1009_saigaitaiken_15.JPG
▲あっという間に釜がいっぱいになりました。だいたい1万個くらいはあったとのことです。

2025_1009_saigaitaiken_16.JPG
▲釜を釣り上げ、加熱のフェーズへ。ここから、しばらく時間がかかります。

2025_1009_saigaitaiken_17.JPG
投入後、 NGO 国境なき発電所 事務局長・岡 雄一郎氏からもペットボトルキャップの素材や、リサイクルの流れの解説がおこなわれました。

防災イベント体験も実施

 なお、「KASHIN INFINITY®」の稼働中やその他の合間の時間には「国境なき発電所 in 京丹波町」実行委員会による防災イベントが実施され、多くの参加者が集まっていました。

2025_1009_saigaitaiken_18.JPG
▲ブルーシートと棒を使った簡易担架の作りかたや、人の運びかたを解説。

2025_1009_saigaitaiken_19.JPG
▲ロープワーク講習も。

2025_1009_saigaitaiken_20.JPG

2025_1009_saigaitaiken_21.JPG
▲ブルーシートを使った、簡易トイレの設置方法なども講習していました(中には水の溜まった金属製の箱が置かれている)。

②発電&創電編

 加熱を開始してからしばらく時間が経つと、「KASHIN INFINITY®」の内部に炭化水素がガス化したものが現れはじめます。そこで次は、このガスを使ったいくつかのデモがおこなわれました。

2025_1009_saigaitaiken_22.JPG
▲ペットボトルキャップを油化する途中に生じるガスのチカラで発電機を動かし、充電器を充電します。溜まった電力は、パソコンやスマートフォンの充電にも使えます。

2025_1009_saigaitaiken_23.JPG
▲電気式の小型バイクも動きます。このときは、事前にペットボトルキャップを油化する工程で生じた電気でフル充電されていました。子どもは乗れませんが、乗った大人たちはみな楽しそうにはしゃいでいました(笑)。

2025_1009_saigaitaiken_24.JPG
▲充電器を使って、小型の炊飯器でご飯を炊くという面白い試みも(右下の白い箱が炊飯器)。

2025_1009_saigaitaiken_25.JPG
▲新潟県産のコシヒカリが炊き上がりました。筆者も食べましたが、お米にツヤと甘みがあって、とてもおいしかったです。

③抽出編

 加熱から数時間が経過し、ついにペットボトルキャップから作った油の抽出ができるようになりました。なかなかお目にかかれない場面ということもあり、参加者の皆さんも興味津々です。

2025_1009_saigaitaiken_26.JPG
▲抽出するところを観たい! と、集まる皆さん。

2025_1009_saigaitaiken_27.JPG
▲できた油を排出しているところ。

2025_1009_saigaitaiken_28.JPG
▲缶に入っていると緑っぽく見えますが、すくうと茶色っぽい感じです。ちなみに、ガソリンのような強烈なにおいがします。「くさ~い!」と悶絶する子どもも(笑)。

2025_1009_saigaitaiken_29.JPG
▲ろ過すると、透き通ったキレイな感じになります。

 今回抽出できた油は、30リットル弱くらいだったそうです。最後に、岡氏から油の成分や特徴についての説明があったほか、創電した電気を使って充電した小型の蓄電池が配布されることが告知され、この日のおもなプログラムは終了となりました。

2025_1009_saigaitaiken_30.JPG
▲小型のドローンで、上空からの記念撮影もおこないました。

朝食と降下訓練

 無事に1日目が終了し、イベントは2日目へ。この日は朝食の缶入りパンと、インスタントスープの朝食が参加者に振る舞われるところから始まりました。

2025_1009_saigaitaiken_31.JPG
▲朝の山は霞がかっていました。このときの気温は15度くらいで、半袖だとさすがに肌寒かったです。

2025_1009_saigaitaiken_32.JPG
▲朝食の缶入りパンとスープが配られました。

2025_1009_saigaitaiken_33.JPG
▲缶入りパンには、4種類のフレーバーが。

2025_1009_saigaitaiken_34.JPG
▲パンの中身はこんな感じ。「おいしい!」と評判でした。

 朝食を終えると、最後のプログラムである降下訓練へ。キャンプ場の入り口にある、高さ78mの鉄塔から、ロープを使って降りる体験ができました。メインの指導にあたったのは、元・消防士の松川氏でした。

2025_1009_saigaitaiken_35.JPG
▲降下訓練に使われた鉄塔。意外と高いです。

2025_1009_saigaitaiken_36.JPG
▲ヘルメットとハーネスを装着して、準備完了! ちなみに、このプログラムは子どもも大人も体験できましたが、とくに子どもたちが「やりたーい!!」と朝から元気いっぱいでした(笑)。

2025_1009_saigaitaiken_37.JPG
▲教わったとおりに、ロープを使って少しずつ降下します。これも、普段ではなかなかできない貴重な体験です。

 やがて降下訓練も無事に終わり、全プログラムが終了となりました。最後に宮本氏が参加者に感想を尋ねると、「いつ何が起きてもおかしくない昨今なので、子どもたちも含めてすごく学びになりました」「ロープワークなどは普段の生活やキャンプなどで活用できるので、家で復習したい」といった声が。

 こうして、2日にわたる宿泊型災害体験イベントは幕を閉じました。

おわりに

 今回は、京都の京丹波町で実施された宿泊型災害体験キャンプイベントの模様をお届けしました。

 参加者の方からは、ペットボトルキャップから実際に油が生成される様子を見て、「家庭用があれば欲しい!」という大変前向きな感想をいただきました。ごみの分別という身近な行動から、「誰もがサーキュラーエコノミーに貢献できる」ことを実感していただけたのではないでしょうか。

 畠中氏や参加者の皆さんが述べたように、昨今は未曾有の災害が突如発生することもままあります。こうしたイベントは、食料品や物資などの備えに加え、電気をはじめとした生活ライフラインが途切れたときにどう対応するか? ......といったことを考えるきっかけになりそうです。本記事をここまで読んでくださった皆さまも、機会があればぜひ身近な防災イベントに参加してみてはいかがでしょうか。

 マクニカでは今後もさまざまなテクノロジーを活用し、関係各所と協力しながら社会活動に貢献してまいります。