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ペットボトルのキャップが油に大変身! 「ちびっこリサイクルチャレンジ」in横浜開港祭レポ

ペットボトルのキャップが油に大変身! 「ちびっこリサイクルチャレンジ」in横浜開港祭レポ

 2025531日~62日の3日間、神奈川県横浜市の「みなとみらい 臨港パーク」にて、「第44回横浜開港祭」が開催されました。どこまでも開放感の続く広大なエリアの各所では、さまざまな企業や団体がお店やブースなどを出展し、多くの人がイベントを楽しんでいる様子がうかがえました。

 マクニカは今回、海の見える場所からほど近い「臨港パーク」の南口広場にて、廃プラスチック還元装置「KASHIN INFINITY®」と、ごみ乾燥減量装置「メルトキング®」を提供。一般社団法人横浜青年会議所との共創により、開港祭で出た食物残渣や一般ゴミを会場内でリサイクルし、資源循環の重要性を開港祭の来場者に対して実演展示しました。

 本記事では、開港祭でマクニカが実施した「ちびっこリサイクルチャレンジ」の様子や、「KASHIN INFINITY®」および「メルトキング®」の概要などをご紹介します。

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キャップとお菓子を交換しよう! 「ちびっこリサイクルチャレンジ」

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「ちびっこリサイクルチャレンジ」は、マクニカのテントにペットボトルのキャップをお持ちいただいた方に、お菓子の詰め合わせをプレゼントする(キャップと交換する)という企画。

 当日集まったキャップは「KASHIN INFINITY®」を使って油に還元することになっており、来場者がその様子を見学することもできました。市民や観光客の皆さまに楽しんでいただくと同時に、ゴミ処理によりCO2排出削減の意義をご覧いただくことが狙いです。

 マクニカのスタッフは開始前から「キャップちゃんと集まるかな?」とちょっぴり落ち着かない様子でしたが、なんと2日間で1717名(668組)もの方にお越しいただきました!

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▲記念すべき1組目の方は、こんなにたくさんのキャップをお持ちくださりました! 日頃からしっかり分別をしたうえで集められていることがうかがえます。

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▲開港祭の特性からか、親子連れの方が中心でした。通りすがりにこのイベントを知り、捨てようとしていたキャップでお菓子をもらえて大喜びしたり、その場で残りをイッキ飲みしてお菓子ゲットを狙ったりした子も(笑)。

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▲とくに初日は天気もよく、スタッフによる懸命の呼びかけの甲斐もあって、多くの方がテントに吸い寄せられていました。

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▲これでも集まったうちのごく一部です。改めまして、ご協力いただいた皆さまありがとうございました!

資源循環の大切さを学ぶ「ドクターペット」の勉強会

「ちびっこリサイクルチャレンジ」が順調に進むかたわら、テントの中では資源循環の大切さを学べる勉強会もおこなわれました。登壇したのは、マクニカのサーキュラーエコノミー事業部に所属する、リサイクル大好き博士こと「ドクターペット」。ここでは、彼による勉強会の内容をご紹介します。

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ドクターペット:

まず最初に、「リサイクル」という言葉を聞いたことがある人はいますかー? おお、ほぼ全員分かっていますね! 素晴らしいです。じゃあ、その意味は知っているかな? 

(手を挙げてくれた子が答える)

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 「別のものに作り変えること」、そうですね! 私たちはふだんの生活でさまざまなものを使っており、使い終わったものや壊れてしまったもの、食べ残しなどは捨てています。でも、ドクターペットはこういったゴミをできるかぎり減らしてほしいと考えています。

ゴミが増えると、色々な問題が起きます。たとえば、ものを作るにはたくさんの原材料が必要なので、資源をたくさん使います。その資源を残すためにも、ゴミを減らさなければならないんですね。さらにゴミが増えることで、皆さんも聞いたことがあるかもしれない地球温暖化の原因にもなります。 

最近ではゴミを埋め立てる場所も少なくなってきており、横浜市では残り50年分が限界だとも言われていますし、海に住んでいるお魚さんなどの動物が、食べ物と間違えてゴミを食べてしまう危険もあります。もしかしたら、そのゴミを食べたお魚さんたちを今度は私たちが食べることになるかもしれません。それはイヤですよね。だからこそ、ゴミの分別は大切なのです。

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リサイクルのために皆さんができることは、ゴミの分別です。この開港祭では、ゴミが7種類に分別されています。「いま住んでいるところでも、こんなゴミの分別ルールがあるよ」という方はいますか? 

(子どもたちから電池・段ボール・服などの回答が挙がる)

いいですね! ありがとうございます。色々なゴミをごちゃ混ぜにして捨ててしまうとまとめて燃やすしかないので、ゴミの量はなかなか減りません。でも、それぞれのリサイクル工場に持っていけばゴミを減らしながら新しいものに作り変えることができるので、埋め立てするゴミの量も減らすことができます。 

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たとえば、ペットボトルは新しいペットボトル・洋服・文房具などになります。皆さんが今着ているお洋服なんかも、その一部にリサイクルされたペットボトルが含まれている場合がとても多いです。

ほかにもペットボトルキャップは買い物かご・ボールペン・プランター、カンは新しいカン・車・洗濯機など、リサイクル先は実にさまざまです。ぜひ皆さんにもリサイクルを頑張ってほしいと思います。もし分別のルールが分からなければ、お父さんやお母さんにも訊いてみてください。

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私たちは、今回の開港祭で新しいリサイクルの技術を紹介しています。それが、ペットボトルキャップを油に変えるというものです。

皆さんも、ふだんからお水や氷を飲んだり使ったりしていると思います。氷は温まると水に変わって、水は温まると水蒸気に変わりますよね。実は、このペットボトルキャップも温めていくと油に変わり、さらに温めると蒸気になります。そして、このときに採れる油は、車や飛行機を動かす燃料にもなります。

今日はそれができる機械を会場に持ってきていて、皆さんからいただいたペットボトルのキャップを油に変える実演をしています。実際に油を抽出するところも見学できるので、よろしければぜひ見ていってください。それでは、今日はありがとうございました。

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――以上、ドクターペットによる勉強会の内容でした。キャップを持参くださった方のなかには「KASHIN INFINITY®」や「メルトキング®」に興味をおもちいただいた方も多くいらっしゃいました。また、下記のようなとても嬉しいコメントもいただきました。

・半導体の会社だと思っていたマクニカが、リサイクルなどの取り組みをしていることを知って驚きました。

・地元(横浜)の企業がゴミ処理の機械を扱っていて、地球に貢献してくださっていることが嬉しかったです。 

・今後こうした知識が根づいてほしい子どもに対して、すごく分かりやすく説明してくださった。ちょうど直近でゴミ焼却場に行く機会があったので、いい時期でした。

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▲勉強会後の案内の様子。なかなか見られない機械なので、皆さん興味津々でした。

KASHIN INFINITY®の概要

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 この機械は、一般的に廃プラスチックと呼ばれる固形物を無酸素状態で間接的に加熱することで蒸気化し、水冷して油に変えるというものです。抽出直後はガソリン相当・軽油相当・灯油相当・重油相当が混ざった状態になっていますが、これを「KASHIN INFINITY®」で再度処理すれば、ボイラーや発電機などのさまざまな機械で利用できます。

 周知のとおり、廃プラスチックの処分には費用がかかります。しかし、「KASHIN INFINITY®」を使えば収集・運搬の手間はなくなり、処理費用もゼロに。また、生成した油をエネルギーとして使えるので、コストの大幅削減が実現します。さらに廃プラスチック処理の際に生じるCO2の排出量も削減され、SDGsにも貢献できます。

 使用時は、まず機械の一番左にある「加熱窯」のフタを開け、プラスチックを投入していきます。加熱窯は250Lの容積があり、ペットボトルキャップであれば約30kg(10,000)を処理することが可能です。

 蓋を閉じ加熱を始めると、次第にプラスチックは個体から液体になり、やがて蒸気となって配管に移動します。

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▲加熱釜。この中にプラスチックを投入します。ペットボトルキャップの場合はそのまま入れることができます。

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▲キャップの投入作業中。大人が登っていると、機械全体がかなり大きいことが分かります。

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▲フタを閉じて起動すると下側の大きく膨らんだところに炎がめぐり、加熱をおこないます(お鍋を火にかけるイメージ)。この日はペットボトルキャップが軽いため運転時間も少し短く4時間ほどの運転時間でしたが、もっとプラスチックが入っていると、最大で6時間ほどの運転時間になるとのことです。

 プラスチックの種類によっては塩素などが混ざっている場合がありますが、それらは「前処理装置」と呼ばれる四角い箱のようなところを一度バイパスして通せば除去できます。結果、最終的には純粋な油の蒸気がまた配管を通って右方向へ進んでゆきます。

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▲前処理装置。

 途中に差しかかると、垂直にくだる管とタンクがあります。ここには蒸気が通る管の周囲に水が通っており、蒸気を冷却して結露させることで、蒸気を液体()に変化させ、油をタンクに落とす仕組みになっています。

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▲油を溜めるタンク。

 先述のとおり、生成した油はガソリン相当から重油相当までが混ざっており、低温でも発火してしまう危険な状態です。そこで、油の中でも発火しやすい成分(ガソリンなど)をさらに右側の第2タンクに分離し、ユーザーが保管をしやすいようにしています。

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▲一定条件の油がさらに移動してくる第2タンク。タンクの右側にはいくつものバルブとセンサーが並んでおり、内部圧力を常に監視しているほか、いざというときに自動で加熱停止や弁を開放させるような安全体制が整備されています。

 なかには、第2タンクでも結露しないメタンガス・プロパンガスのような軽いガスもあります。それらは機械の裏側から延びる管を通って加熱釜内で高温脱臭され、その際に発生する余熱は加熱のための熱源として再利用されます。つまり、投入した廃プラスチックは基本的にムダなく使われているのです。

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▲キャップを油化したもの(原油)を排出しているところ。このあと再び「KASHIN INFINITY®」に投入し、ガソリン相当・軽油相当・灯油相当・重油相当に分別していきます。

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▲実際に分別した油。かなり透き通っていてキレイです。

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▲カンの中にあると緑っぽく見えますが、すくってみるとオレンジっぽい色に。ガソリンや灯油のようなにおいが立ちこめていました。

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▲最後のほうに排出される原油には炭になったプラスチックなどが残っている場合があるので、ろ過します。

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▲プラスチックの分解時にできたガスで発電機(左の青い機械)を動かし、右のポータブル電源でパソコンやスマートフォンを充電していました。これがペットボトルのキャップでできると考えると、リサイクルの大切さが身にしみます。

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▲「KASHIN INFINITY®」のパネルも展示しました。

 なお、今回は約60kgのキャップを投入し、45.6kgの混合炭化水素油になりました。

 

メルトキング®の概要

 「メルトキング®」は食品廃棄物や医療系の感染性廃棄物のもつ水分を無酸素状態の間接加熱で蒸発させ、乾燥減容することができる機械です。

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▲正面から見たところ。四角くて大きいです。

 「メルトキング®」の処理容量は、1,000Lタイプと500Lタイプの2種類があります。1,000Lタイプでは約750kg500Lタイプでは約350kgを一度に処理できます。

  処理室に乾燥減容させたいものを投入して起動すると、処理室の外側がガス火で加熱され、投入したものに直接火を当てることなく徐々に乾燥させていきます。

 なお、処理室の中ではブレードがゆっくりと回転しながら撹拌し、固形物などでもほぐしながら均一に熱を加える仕組みになっています。そうして水分を飛ばしていくと、食品廃棄物は7580%、医療系の感染性廃棄物は5080%もの重量を削減できるほか、かさばる廃棄物もコンパクトに減容させられます。

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▲会場内で出た食物残渣を投入するところ。

  「メルトキング®」の開発時期は、2025年からみて約30年ほど前にさかのぼります。マクニカではこの製品を取り扱うにあたって独自にIoT化をすることになり、自社開発したセンシング機器「SENSPIDER」を搭載しました。

 これにより、同じくマクニカが扱うEMS(エネルギーマネジメントシステム)「Kisense®」を通じて排気口・脱臭室・加熱室・滅菌室の温度監視が可能に。さらに重量のデータや振動などのデータを読み取ることができ、故障の予知保全も万全です。

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▲各箇所の温度など。

 廃棄物をプレスして脱水する機械などはビニールが混じっていると処理しきれなかったり、水分が残ってしまうことがあります。しかし、「メルトキング®」では投入物が最終的には乾いた土状のようになるためビニール袋に入れたままでも生ゴミを投入でき、水分もしっかりと飛ばせます。ユーザーにとって、非常に作業のしやすい機械だと言えます。

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▲投入したゴミを処理したあとの状態。少し焦げたようなにおいがするくらいで、生ゴミ特有の悪臭などはまったくしませんでした。

 「メルトキング®」によって廃棄物を減容・減量すれば、重量が5090%減らせ処分費用が大幅に安くできます。とくに感染性廃棄物の場合、180℃で間接加熱して菌を死滅させることで非感染性廃棄物として捨てられるようになるため、重量だけでなく単価も下げられるため、その恩恵は大きいと言えるでしょう。食品廃棄物の場合は処理したものを肥料として活用することもでき、まさに一石二鳥です。

 ちなみに少し変わったところでは、ゴルフ場で刈られた芝の処分や、ゴミを捨てられない南極の昭和基地でも長く用いられています。今後も、さまざまな用途で活躍してくれそうです。

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▲「メルトキング®」のパネルも展示しました。

 なお、今回は2日間で合計163kgのゴミを投入し、そのうち88.2kg(約54%)を削減することができました(処理後の残渣が74.2kg)。お弁当の容器や割り箸など、含水率の少ないゴミが中心でしたが、含水率の多いゴミの割合が増えれば、削減量はもっと多くなります。

世界で日本で、喫緊の対応が迫られるゴミ処理問題

 近年、ゴミの処理は世界的な課題となっています。経済成長に伴った廃棄物増加による自然界へのゴミ流出、ゴミの運搬・焼却で排出されるCO2、埋め立てやリサイクル処理にかかるコストや処理能力の限界、発展途上国へのゴミ輸出など、さまざまな問題が取り上げられています。

 また、日本でも地方行政におけるゴミの減量減容、リサイクルやゴミに関連したCO2排出量の削減は大きな課題となっています。そんななか、マクニカはサーキュラーエコノミー事業として、カーボンニュートラルや資源循環に貢献する製品やシステムの開発、販売を行っています。そして、エネルギーを作る・使う・再利用し、「ゴミをゴミでなくす」ことに貢献する企業活動を推進しています。

 また、こうした活動のなかで、地域ゴミを大型施設で処理をする方法から、排出者が責任を持って減容減量とリサイクルを行う「分散型ゴミ処理」への変換が必要となってくると考えています。今回の「ちびっこリサイクルチャレンジ」などを通じて、その大切さが少しでも訪れてくださった皆さまに伝わっていれば、とても嬉しく思います。

 マクニカでは今後もさまざまなテクノロジーを活用し、SDGsをはじめとした社会活動に貢献してまいります。

■マクニカ サーキュラーエコノミー事業 Webサイト

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