いざ、学びと成長の冒険へ! 34人の現役高校生が体験した、最先端テクノロジーの可能性【企業講座レポ】

神奈川県は横浜市にある、横浜市立南高等学校(以下、南高校)。「知性・自主自立・創造」を教育理念に、国際社会で活躍できるグローバル人材の育成を目指す同校では、多様な企業を招き、生徒にさまざまな体験をしてもらう「企業講座」を長年実施しています。
昨今はテクノロジーが指数関数的に進化・発展し、大きな社会変革を迎えています。そんななか、未来の担い手である生徒たちが社会への理解を深め、主体的に行動するための意識やきっかけを創り出す企業講座は、きわめて大切な機会だと言えるでしょう。
そしてマクニカは、そんな南高校の取り組みにお招きいただいている企業の1つです。2023年11月11日には昨年に引き続き同校を訪問し、34人の生徒と一緒に2つのプログラムを実施しました。1つ目は、自動運転EVバスの試乗体験(※)。2つ目は、生成AIで出力したイラストをペン立てに印刷するワークショップです。
※:車両は自動運転仕様だが、当日はマクニカ社員が車室内に同乗し、手動操作にて運転
なお後者では、以前からマクニカとの共創活動に取り組むローランド ディー.ジー.株式会社(以下、RDG)社員の皆さまも、本社のある静岡県から駆けつけてくれました。果たして生徒の皆さんは最先端テクノロジーに触れ、どのように感じたのでしょうか? 本記事では、現地取材レポートをお届けします!
■横浜市立南高等学校とは?
昭和29年5月1日設立という、長い歴史を誇る全日制普通科高校である。平成24年に横浜市立南高等学校附属中学校を開校し、併設型中高一貫校となった。「知性・自主自立・創造」を教育理念に、「学びへの飽くなき探究心を持つ人材の育成」「自ら考え、自ら行動する力の育成」「未来を切り拓く力の育成」の3つを教育目標にしている。"次世代のグローバルリーダー"を育成するため、国内・海外研修や国際交流活動も継続的に実施。
■ローランド ディー.ジー.とは?
業務用インクジェットプリンターを中心とするプリンティング事業と、3次元デジタルツールを中心とするDGSHAPE事業を柱とし、イメージ(想像)をカタチ(創造)にするデジタル機器を開発・製造・販売している企業。各国の連結子会社を中心に、世界200以上の国と地域に製品やサービスを提供中。
※本記事の写真は、いずれも横浜市立南高等学校および参加された方の同意を得て掲載しています。
目次
- 乗り心地は十人十色!? 自動運転EVバス試乗体験
- 生成AIとUVプリンターで体験する"新時代のものづくり"
- プラスチックでも超簡単! お楽しみのプリントタイム
- 作品に込めた想いをみんなに伝え、大団円!
- まとめ
乗り心地は十人十色!? 自動運転EVバス試乗体験
1つ目のプログラムは、自動運転EVバスの試乗体験です。広いグラウンドに搬入された、紫色が特徴的な車体を前に、集まった生徒の皆さんは期待に胸を膨らませている様子でした。
▲この車は、GAUSSIN MACNICA MOBILITY(ゴーサン・マクニカ・モビリティ)社が提供している小型バス『EVO(エヴォ)』です。当日はマクニカのスマートシティ&モビリティ事業部から谷口(写真左)と山入端(やまのは:写真右)が現場を訪れ、自動運転や車体についての説明や、操縦を行いました。
▲谷口からの説明を真剣な表情で聴く、生徒の皆さん。
説明が終わり、いよいよ自動運転EVバスへの試乗体験がスタート! このとき、我先にと駆け込むような子は1人もおらず、尊い譲り合いの精神が見受けられました(笑)。
乗車完了後、山入端が車内にてコントローラーで操縦するバスがグラウンドを走りました。最初は外周トラックに沿い、その後はグラウンド内で前進・バックを行うなど、さまざまな動きで生徒の皆さんを楽しませていました。
▲走行中の車内。見てください、この楽しそうな表情!
▲車内の雰囲気その1。
▲車内の雰囲気その2。
▲当日使用されたコントローラー。一般的なラジコンのものと大差なく、これで小型バス1台がスイスイと動くことにも、テクノロジーの進歩を感じます。
▲いわゆる計器類。速度などはもちろん、カメラで外の様子も分かります。
今回、生徒の皆さんはいくつかのグループに分かれ、交代制で自動運転EVバスへの試乗体験を行いました。降車後の皆さんへ突撃インタビューを実施したところ、実にさまざまな意見を聞くことができました。
【乗る前の期待】
・最先端の技術を見られることを楽しみにしてきた
・乗り心地を楽しみにしてきた
・どのぐらい技術が進んでいるのかが気になっていた
【乗った後の感想】
・体感スピードが速かった
・ジェットコースターみたいだった
・普段乗っているバスよりも揺れなかった
・車内が静かだった(電気による走行のため)
・曲がる際などに小回りが利く点がよい
・速度も含め、前進とバックの差がないところに感動した
・シートベルトがあるなど、安全面への配慮がなされている
・バスの運行本数が少ないところに住んでいるので、今後の普及に期待したい
・窓ガラスが多く、景色が見やすいところがよいと思った
・暖房が点いていて暖かかった(当日は気温が低いうえに強風だった)
「速かった」「ジェットコースターみたいだった」という声も出るなか、その次のグループに訊いた際には「普段乗っているバスよりも揺れなかった」という、逆の声が飛び出したのは興味深い点でした(もしかすると、操縦者の気まぐれもあったのかもしれませんが......?)。
シートベルトによる安全性の高さ、窓ガラスが多いことによる景色の見やすさへの言及は、やはり高校生らしい柔軟な発想力の賜物といったところでしょうか。一方で、地元のバス運行本数の少なさを挙げた子もおり、リアルな社会課題の一端も垣間見えました。
乗車の順番が一周したところで、1つ目のプログラムは終了の時間を迎えました。最後は全員でEVOを囲み、記念撮影です。皆さん、とっても素敵な笑顔を見せてくれました!
生成AIとUVプリンターで体験する"新時代のものづくり"
舞台は校舎内へと移り、2つ目のプログラムの始まりです。
▲パソコンの利用や講義などを行える、広い部屋に集まりました。
最初にマクニカの本村やRDGの中村さんから、それぞれの会社紹介、今回の取り組みの背景やワークショップの説明が行われました。
▲マクニカの本村(写真右)と、RDGの中村さん(写真左)。
▲マクニカのパーパスについての説明も。
本村が特に力強く語ったのは、生成AIが世界中にもたらした大きな影響についてでした。「今後、日本は1億総クリエイター時代を迎え、誰でも生成AIで多くのものを創り出せるようになります(要約)」と述べ、生徒の皆さんにもChatGPTなどを積極的に活用するように促していました。ちなみに、本村が「ChatGPTを使ったことがある人~?」と質問したところ、手を挙げたのは34名中2名でした(笑)。生成AIが世代を超えて幅広く普及するには、まだ少し時間がかかるのかもしれません。
▲中村さんによる、RDG会社説明の様子。
▲今回のワークショップで活躍した、UVプリンターの説明。
今回のワークショップは、生徒の皆さんがいくつかの画像生成AIを使って自由にイラストを作成。その後RDGのUVプリンターを使い、そのイラストをペン立て(プラスチック製)にプリントしてもらうという流れでした。
▲完成サンプルを手に、笑顔がこぼれる子も。「今からこれを自分の手で創れるんだ」というワクワク感が伝わってきました。
冒頭の説明が終わったところで、いよいよ実践へ。多くの子が生成AIは使い慣れていないと答えていたものの、さすがは高校生。周囲と密に相談しながら、次々と素敵なイラストを生み出していました。
▲「こんなのができた!」とお互いに見せ合う場面も多く見られました。
▲先生方も、生徒の皆さんを温かく見守っていました。
周知の通り、生成AIにはプロンプトという命令文を打ち込む必要があります。もちろん日本語でも問題ないのですが、一部の子たちは英語でプロンプトを入力しており、さらに「英語の方が意図したイラストを作成しやすい」という声もありました。まさにSGH(スーパーグローバルハイスクール)ならではの対応力だと言えるでしょう。
以下に、生徒の皆さんが打ち込んでいたプロンプトの一部をご紹介します。
・A cute girl surrounded by many animals like birds and rabbits and interacting with...
・Beige French Bulldog taking a nap with a girl under the sun shining through the trees
・Space, gravity, black hole, cool, huge ,impact, line, math, rocket, earth
・A jumping lion with the word stakes
・Logo of a rock band called stakes
・The Earth of the future ,sea, and fish
・Beast on the bed
・Ramen mountain
・Ghost tower
・宇宙を駆け抜けるライトニングロケット
・雲の上でサッカーをする子どもたち
・ポップなゲルニカ
・15年後の中二病
・やばいやつ
・鳥が歌う
この工程では、自分の友達と組んで活動しているバンドのロゴを作ってみたり、ペットと自分が一緒に過ごしている場面を作ってみたりと、実に自由で幅広い発想が見られました。
プラスチックでも超簡単! お楽しみのプリントタイム
生成AIでのイラスト作成が終わり、いよいよプリント工程へ。今回は使用するプリンターがとても大きなものだったため、広いスペースのある食堂で行われました。プリンターの名称は、『VersaOBJECT LEF2-300 』。革・プラスチック・金属など多様な素材に対し、色鮮やかなグラフィックや立体的な特殊印刷を行える、RDG製のUVプリンターです。
▲『VersaOBJECT LEF2-300』。
▲前面を開け、中に印刷対象物を入れます。
▲印刷対象となる、プラスチックのペンケースをセットしたところ。今回は1台につき、1回で10個まで対応できました。
▲PCからプリンターにデータを送信し、印刷している最中。通常の印刷は基本的に、印刷対象物にインクが乗っただけの状態になります。しかし、このプリンターでは特殊な「UV硬化インク」を使っており、「UVランプ(紫外光:写真の青白い光)」を繰り返し当てることでインクが反応して固まり、紙以外のものにも印刷できるのです。
▲珍しい技術が使われていることもあり、プリンターの前には常に人だかりが。皆さん、自分のペンケースの仕上がりが待ちきれず、そわそわしていました(笑)。
▲『VersaOBJECT LEF2-300』で印刷できる物のサンプル。RDGの方いわく、同プリンターは個人に合わせたグッズ制作に使えることも大きな特徴で、特に海外の企業に人気だそうです。
約20分後、ついに印刷が完了! 周りに貼られたテープを剥がせば、自らが生成AIで作成したイラストとご対面です。その後も1つ、また1つとペンケースが完成するにつれ、場の空気が熱くなっていくのをひしひしと感じました。
作品に込めた想いをみんなに伝え、大団円!
ペンケースを受け取った生徒の皆さんは、食堂から先ほどの部屋に戻ります。
そしてここで本村から、ある提案が。「皆さんの作品を、発表してもらいましょう!」......ということで、発表会の幕開けです! 内容は各自の作品をスクリーンに映しながら、作品に込めた思いやコメントを自由に話してもらうというものでした。
▲発表の様子。作品が映し出されるたびに、「おぉ~!」「可愛い~!」などの歓声や笑い声があがり、非常に盛り上がりました。
また、発表の合間には質疑応答も行われました。なかには、「生成AIで作成したイラストの著作権はどうなるのか?」という質問も。生成AIの登場以降、世界中で取り沙汰されている問題なだけに、素晴らしい着眼点だと本村は感激していました。
その後も生徒の皆さんの発表が続き、楽しかったプログラムは終了の時間に。本村はワークショップを振り返り、次のように述べました(以下、本人コメント要約)。
「今日のワークショップで、皆さんが少しでも生成AIを使ってみたいと思ったり、使いこなすことで自分たちが世の中に価値を提供できることを知ってもらえたなら、幸いです。これからも南高校の皆さんに新しいテクノロジーを提供し続けられたらと思っていますので、よろしくお願いします!」
次に、代表生徒からの挨拶がありました(以下、本人コメント要約)。
「今日は貴重なお時間をありがとうございました。生成AIを触ったことはあったのですが、改めて、色々なソフトの存在を知ることができました。自動運転バスも含め、体験しなければ分からないこともあるのだな、と思いました。質問にもお答えくださり、色々な学びを得ることができました。今日は本当にありがとうございました」
こうして、ワークショップは無事に終わりを迎えました。
まとめ
今回は、南高校での企業講座レポートをお届けしました。なお、当日は最後に生徒の皆さんからアンケートを収集したのですが、その結果はなんと、ほぼ満点でした!
また、生徒の皆さんからいただいたコメントの一部もご紹介します。
・本当に楽しかったです! この講座を選んでよかったです!
・今でも十分すごいAIがこれからも進化し続けていくと思うと、楽しみです。
・生成に用いるAIによって画風が違っていて、比べてみると面白いと思った。
・自分でモノを作る感覚があって楽しかった。
自動車などの大きいものにプリントする方法がどんなのかしりたい。
・自分用のプリンターが欲しくなりました! それと地域社会に興味があったので
自動運転バスを実際に体験できてよかったです。
機会があれば茨城とかの実証実験にも行ってみたいと思います!
・聞いたことがあっても実際に体験する機会があまりなかった最先端の技術に触れることができて新鮮でした。
・AIはあまり使ったことがなかったので難しそうという偏見があったのですが、
使い方によって、無限の可能性があることがわかりました。
もっと色々なことを知って自分なりに工夫して活用していきたいと思いました。
・自動運転のバスに乗ったりAIで画像を生成したりするのは初めてだったので
とても貴重で楽しい講座でした。UVプリンターを使えばプラスチック容器の面に
印刷してプラスチックの使用量を減らせるのかなと思い、最新技術が人にも地球にも
価値あるものになることを実感して、未来の可能性にとてもわくわくしました。
これから大学でいろんなことを学び世界に役立つものを作れる人になりたいと感じました。
将来、グローバルに活躍するであろう南高校の皆さんが、自動運転や生成AI&印刷技術といった最先端のテクノロジーに大きな可能性を感じてくれたことは、世界にとって非常に意義のあることだと言えるでしょう。マクニカでは、これからもかけがえのないパートナーやお客様と共に、さまざまな共創活動を推進してまいります。