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人口減少地方都市における地域包括ケアDX ~青森慈恵会とマクニカの共創~

人口減少地方都市における地域包括ケアDX ~青森慈恵会とマクニカの共創~

 本州最北端の青森に拠点を置き、医療・介護・観光分野で利用者に思いやりの心をもった高品質なサービスを提供している、社団法人慈恵会。地方都市が労働力不足・超高齢化社会の課題や多様なニーズへの対応を迫られるなか、慈恵会様はDXを重要な戦略として位置付け、総力をあげて取り組み、学び続けています。本記事では、より良い地域包括ケアの実現や地方創生に挑む、慈恵会様の革新的な取り組みをご紹介します。

※:本記事は、20231112月開催の「MET2023」の講演を基に制作したものです。

【講演者】

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※:上記2名に加え、青森県のユニット型介護老人保健施設「青照苑」にて介護業務を務めている、金澤 真佐美氏にもご協力いただきました。

製造業向けソリューションで、入浴介助の工数が劇的に改善

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本セッションの冒頭は、慈恵会様が社内向けに作成された、慈恵会様とマクニカの共創活動を紹介する約10分ほどの動画からスタートしました。動画では、青照苑が抱える介護の課題をDXで解決したいくつかの事例が紹介されました。丹野氏によれば、「医療介護DXは専門用語が多く難しい分野なので、現在の若い世代にも伝わりやすいように、慈恵会で動画を作成した」とのことです。


八代:まず、金澤さんから青照苑についてご紹介いただけますでしょうか。

金澤:当施設は青森県青森市にあります、平成元年に創立された介護施設です。長年にわたって入浴介助による業務時間増という課題を抱えていた中で、マクニカ様との共創活動の一環としてデジタルツインによる問題解決に取り組みました。

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この画像は、パソコンで再現した青照苑です。それぞれの居室に迎えに行く時刻・お風呂に移動するまでの搬送時間・エレベーターに乗る時間・洗体時間・居室に戻るまでの時間をストップウォッチで測定し、それをデータ化して業務改善に活用しました。

八代:こちらは主に製造業で使われている、Siemens社のPlantSimulationというテクノロジーを介護現場で活用した事例です。2022年に開催されたMET2022でも「ある程度の成果が出た」とうかがっていましたが、現在に至るまでにさらなる効果があったそうですね。

金澤:はい。当初、入浴に関わる職員は17名だったのですが、週2回の入浴のために各自が残業しないと、十分な人数を確保できませんでした。また、入居者様の待ち時間も最大で60分ありました。そこで第1弾の取り組みとして、男女を入れ替えて搬送の仕組みを変えてみたところ、所要時間を50分削減でき、残業時間が減ったのです。これを皮切りに職員の意識も少しずつ変わり始め、入浴の回数を週2回から4回に増やそうという話になりました。

その後、入浴に関わる職員の数を減らして稼働できることにも気が付き、残業時間を大幅に削減しつつ、入居者様の待ち時間が0になることもありました。これがとても嬉しく、一番大きいと感じたことです。

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八代:今のお話だけでも、このプロジェクトには非常に高い価値があると思います。理事長、その他の特筆すべき点をお教えいただけますでしょうか。

丹野:工業生産的なDXは、「分数や工程が削れた結果、コストが削れた」というものが多いと思っています。私たちのDXは、削減されて浮いた時間を高齢者の別なサービスに充てられる・喜びが増えているという点において、医療介護DXのダイナミズムなのではないかと思っています。そこが職員の喜びであり、やりがいでもあります。

そもそも職員たちがこの仕事を選んだのは、ご高齢の方や困っている方に寄り添い、介護・看護・リバビリなどを行うためであって、お風呂への搬送をするためではないはずです。DXには、それを認識させてくれるインパクトもあるのだなと感じました。

最初の17名がクイックウィンを成し遂げたことで、「私たちにもできるんだ」という成功体験が起こりました。マクニカ様は常に伴走しながら、一緒に喜び、感動し、苦しんでくれます。これこそが、価値共創がもたらす大きな社会インパクトだと思っています。金澤さんもワクワクしていますし、Siemens社も自社のテクノロジーが本州最北端の介護事業に使われていると知ったら、きっと驚くことでしょう。

厚生労働省や経済産業省が「人口が減少するなか、いかに少ない人手で高い価値を生み出すか」に注力するなか、私たちは入浴というコアサービスはそのままに、その前後の移動時間を効率化しました。ノンコアな間接業務を削り、プロが介護の本質に集中できるDXを実現できたことが、マクニカ様との取り組みにおける最大の成果です。

「魚をもらうのではなく、釣り方を教わるDX」で横展開にも成功

八代:デジタルツインによる入浴介助のプロジェクトは青照苑にとどまらず、青森慈恵会病院様でも推進されています。具体的には認知症病棟と一般病棟で取り組んでおり、前者ではすでに月120時間を削減に成功、その非常に高い成果をもって一般病棟の方にもチャレンジしているそうです。介護施設と医療施設は別のカテゴリーであり、規模も違うため、横展開には苦労も多かったと思います。それらを乗り越えるための重要なポイントは、どこにあるのでしょうか。

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丹野:ユニット型かつ個室・100名規模の青照苑で戦略的に成功を収められなければ、332床のケアミックスという、複雑で4人部屋があるような医療機関のDXはできるはずがありません。そのため、青照苑には常にトップバッターで挑戦してもらい、そこで失敗したものは改良すればよいと考えています。成功したものはノウハウがありますし、デジタルツインの作り方は私たちのDXチームが詳しいので、それを医療の方に持っていけます。

認知症病棟は精神科領域であるため、青照苑にはない複雑性がありますが、それらをデジタルツインで可視化することで、課題解決を目指しています。DXでもっとも大事なことは、やはり可視化です。「認知症の高齢者、精神科だからデータ収集は無理だろう」「認知症の方の動きはおそらく追いきれないだろう」というのは、諦めです。「青照苑でも成功したのだから、認知症でも成功するはずだ」「認知症で成功すれば、ケアミックスでも終末期でもできるはずだ」と思っています。マクニカ様がいつも側にいて走ってくれるので、私たちは「次行こう、次行こう」とどんどん展開ができています。

介護という小さいスタートに見えるかもしれませんが、この成功は社会インパクトとしては大きいのです。この先は医療・精神科でも必ず成功しますので、それを全国が真似し、模倣し、普及していくと、社会が変わっていくだろうという自信をもっています。

八代:今のお話に、DXチームという言葉が出てきました。慈恵会様ではデジタルツインを使いこなしていることも非常に大きなポイントかと思うのですが、この点についてはどのようにお考えでしょうか。

丹野:マクニカ様は「魚をあげる」のではなく、「釣り方を教えてくれる」のですが、介護職員がいきなり教わるのはハードルが高いと考えています。そこで、本部にSE志向の職員3名ほどで構成したDXチームを設け、そこがハブとなって教わっています。最初はイワシだけを釣っていたのが、やがて鯛やマグロも釣れることを目指すように、自立を促してお互いに刺激しあっていくことが伴走には大切です。マクニカ様は、それを価値共創と表現してくださっているのだと思っています。

マクニカ様も私たちに伴走しながら、「お困りの課題を抱えている医療法人・社会福祉法人に、このDXのやり方をお届けしよう」と考えてくださっています。そうしてお互いが価値共創した先に待っているのは、より良い社会ですよね。病院介護事業は課題がとても多いので、それらをDXで解決する価値共創にはインパクトがありますし、すごくいいものだと思います。

職場環境の改善で取り戻した、笑顔とご飯の匂い

八代:ここからは舞台を青照苑に戻し、働く環境の改善というテーマでお話をうかがいます。金澤さん、介護現場ではやはり「臭い(におい)」が課題になっているのでしょうか。

金澤:そうですね。介護施設では排泄介助は切っても切れないものなので、仕方がない部分もありますが、「なんとかしたい」という想いは常日頃ありました。

八代:この課題の対策として、弊社からはカルモア社の脱臭機を設置させていただきました。同製品は酸素クラスターイオンが悪臭の分子を包み込み、イオン分解することで脱臭・除菌を行います。導入に関して職員の皆さまにアンケートを採ったところ、導入前は8割の方が「臭いが気になる」という回答でしたが、導入後は8割の方に「効果を感じている」と回答いただき、改善を実感いただけたようです。

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また、官能評価という人の評価を定量的に表したデータもあります。左側の「臭気の強度」は数値は高いほど強烈な臭いを感じることを、右側の「不快度」はマイナス値が高いほど不快感が強いことを示しています。これらも、脱臭機の稼働後には改善しています。現場で働いていらっしゃる金澤さんから見て、このアンケート結果と実際の感触でリンクする部分はありますか。

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金澤:はい。私たちが処分するおむつを汚物処理室に持っていくと、その扉を開閉する際に、臭いが風に乗って流れてしまうことがあるのです。ところが、脱臭機を設置してからは汚物処理室の臭いが改善され、扉の開閉時にも臭いが流れなくなりました。入居者様には食事を共同生活室という部屋で摂っていただくのですが、お昼にご飯が炊けると、匂いで「ご飯近くだね」と入居者様が集まってくることもあります。お食事本来の匂いが戻ってきたことが、私は一番嬉しかったですね。

八代:臭いの改善がもたらす職場環境や働き方への影響に関してもアンケートを採ったところ、多くの方がストレスや不快感の減少とともに作業に集中しやすくなり、健康状態や生産性の向上も見られました。理事長、このアンケートの結果やプロジェクト全体を通じてのポイントをうかがえますでしょうか。

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丹野:素直に嬉しいです。私も過去にに介護職を経験しましたが、そのときから臭いが嫌で、それが原因で退職した方もいました。ポイントとしては、3つのステークホルダーを意識しなければならないと私たちは考えています。

1つ目は、施設の職員。悪臭がすれば働きたくないわけですから、当然です。2つ目は、患者様・入居者様。たとえば最高のレストランでも、お店の周辺で下水の臭いが流れていれば、グルメサイトで低評価をつけられます。自分が入居している施設で悪臭がすると、それで気が滅入ってしまうでしょう。3つ目は、お見舞客です。私が親族のお見舞いをするとき、看護師やお医者様の対応がどれだけ素晴らしくても、臭いが立ち込めていると「病院や介護施設では仕方ない」と理解しつつ「どうにかならないだろうか」とも思ってしまいます。

臭いの問題に24年ほど取り組むなかで、色々な業者様がアプローチしてくださったのですが、コストや効果が見合わなかったり、機械が大きすぎたりして断念してきました。しかし、マクニカ様はカルモア社という素晴らしい企業とのコネクトによって「経営者として良いことをした」と感じさせてくれましたし、データ取りやアンケートまで行ってくださるので、本当に良かったと思っています。

社会課題や、地方創生への取り組みも

八代:青照苑は、エネルギー削減にも取り組んでいます。このプロジェクトでは、弊社で取り扱っているエネルギーマネジメントシステム「Kisense」を、202310月に導入いただきました。削減に向けた本格的な活動はこれからとなりますが、課題感や期待について理事長からお話しいただけますでしょうか。

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丹野:電力会社の担当者様とお話をしていると、彼らもエネルギー政策に関しては必死だと感じます。Kisenseは、どの部分にエネルギーを使いすぎているかが見える化されるので、民間企業に求められている使用量削減を実現しやすくなります。コスト面のメリットはもちろんですが、SDGSにも貢献できることから、マクニカ様と新しく起こしたいインパクトですね。

これに関してもクイックウィンが必ず起き、介護・看護・リハビリなどに携わる方々が削減をする喜びが、データで出てきます。そして取り組みが1個成功すれば「2個やろう、3個やろう」という流れができ、気が付けば私たちはエネルギーに大変優しいグループになっており、コストも優位に抑えられていることでしょう。

私たちが関わる医療介護事業は、発生したコストをお客様の売値に転換できないビジネスであり、国が定める診療報酬や介護報酬も財源が厳しい状況です。限られた資源のなかで私たち民間がより思いやりの気持ちを届け続けるためには、コストを効率化する必要があります。青照苑では、それが必ず成功すると思っています。

八代:ここまでは、青照苑や慈恵会病院でのDXについてお話をしてきました。その推進によって二次的な効果も出ているとうかがっているのですが、いかがでしょうか。

丹野:DXを推進している医療・介護・観光グループに就職したいか、無関心なところに就職したいかと言われれば、当然前者ですよね。自分の親を預ける施設でも同様です。DXをやり始めると、組織内部でも「私たちでも何か変えられるものがあるんだ」と士気が高まります。それが経営システムや社会システムに直結し、お客様の喜びや社会全般を変えるインパクトをもって成功体験となり、組織文化が変わり、社会を変える力になる。私たちはいま、それを実感し始めている最中です。

八代:そうした取り組みを外部にうまく発信することで、採用面接に来られる方も増えているのでしょうか。

丹野:私たちの取り組みの動画を学生さんに見せると、やはり「こういう取り組みをしているところに入社したい」という方もいますし、実際に見学や就職していただける方も増えました。また、金澤さんたち頑張りで「介護・看護職の残業を減らすために戦って、DXでリアルに効果も出してくれている」ことが伝わった結果、離職率は減っています。

これから取り組むプロジェクト

 八代:次に、今後取り組んでいくプロジェクトについてうかがいます。まず、ReLaboについてご紹介いただけますでしょうか。

丹野:ReLaboは「青森駅直結のホテルを拠点に人口減少・地方創生に立ち向かう」という主旨で、JR東日本様と民間事業者が協力しながら進めているプロジェクトです。ビジネスホテルに近いものになる予定ですが、近隣の既存事業者と価格競争をすると、地方衰退が起こり得ます。そこで私たちは何らかの価値を生み出すため、「ウェルネス」をキーワードに、6階に「ウェルネスフロア」を設けることにしました。

このフロアでは、医療グループで提供する検査・クリニック・スパ・ヨガなどを、カウンセリングで個人の状態に合わせて体験できます。週末に東京からお越しいただき、検査や運動によって生活習慣を戻したうえでお帰りいただけるような、価値の高いホテル事業を展開予定です。

八代:そんなReLaboの開業にあたっては、弊社からもさまざまな支援をさせていただく予定です。先ほども登場したKisenseをはじめ、人の健康の視点で建物を評価するWELL認証・これに必要な空気質センサーのAiryQonnect・遮熱塗料・カルモア脱臭機・自律移動型のロボットtemi、ベッドセンサーのAI Sleepなどを検討いただいております。このあたりに対する期待感は、いかがでしょうか。

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丹野:Kisenseによる効率的なエネルギー管理は、お客様の快適さ向上につながる可能性がありますね。たとえば高温の場所を検知して適切な温度に調整すれば、エネルギー効率に加え、快適度と顧客満足度も高まるでしょう。WELL認証とAiryQonnectは、普通の空気の質をよりよくする取り組みです。東京都でタクシーに乗るときに「空気清浄機装着者」のシールが貼ってあると安心するように、働く人や旅人のウェルビーイングを認証するということですね。遮熱塗料は塗るだけでエネルギー効率が1530%削減されるので、早く導入するに越したことはないと思っています。

ホテルでは対人で「いらっしゃいませ」と言われる楽しさもありますが、最近の2030代はスマホ自動チェックインや、ロボットに案内されたいという欲求もあるのではないでしょうか。そこはぜひ、temiにもお手伝いしてもらいたいです。

AI Sleepは普通に寝るだけで測定ができるテクノロジーなので、睡眠測定をしたくないという方にオススメです。睡眠時に潜在的に無呼吸になっている方は結構いらっしゃって、場合によっては医療費を増加させている要因にもなっています。それを解決できるといいですね。今回は6つのご紹介ですが、80個くらいはマクニカ様と協力して導入できるテクノロジーがあると思っています。

八代:最後は、ひまわり 異常検知プロジェクトです。慈恵会様では企業主導型の保育所も運営されており、お子様のいる職員の方も安心して働ける環境を提供されています。そして、このプロジェクトでは、そちらの保育所で異常検知ソリューション「iCetana」の検証をさせていただいております。iCetanaは主に警備業務に使われているもので、保育の現場としては初の試みですが、課題感や期待のほどはいかがでしょうか。

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丹野:ひまわりには看護・介護・リハビリに携わる夜勤の方もいらっしゃるので、24時間365日保育事業を行っており、0才児~5才児を突発的に預かることも多くあります。そんな私たちは、社会問題にもなっている置き去りなどの悲惨な事故を、異常検知システムを使って早期発見したいと考えています。iCetanaは常に定点観測を行っているため、普段から変わった挙動をしている子どもが対象でも、さらなるイレギュラーな動き検知してくれるところがすごいと思っています。

また、保育士の変わった動き・事件に繋がるおそれのある動きも捉えることで、ケアの標準化ができます。たとえば、保育士さんが良かれと思ってした抱っこのやり方が、実は危ないものかもしれません。異常検知は提供サイドの保育所が安全面の品質管理を行い、高品質なケアを維持していくためにも役立ちます。

八代:新しい分野への挑戦なのでチャレンジングな部分は色々あると思いますが、ぜひ一緒にうまく事を運びたいと私たちも考えています。

丹野:このプロジェクトが成果をあげ、保育事業向けの異常検知の基盤ができたら、厚労省などが予算を作ったうえで、日本全国で義務化してほしいですね。実際、現場での異常検知は親や保育士の長年のカンだけが頼りなので、それらをテクノロジーで発見できるようになれば、素晴らしいことだと思います。これもまさに伴走であり、お互いに依存することのない価値共創の例ですね。

慈恵会が目指す未来と、マクニカへの期待

八代:ここまでにさまざまな施設やプロジェクトの成果をうかがってきましたが、DXを積極的に推進することの重要性やポイントについてお聞かせいただけますでしょうか。

丹野:「イノベーションを起こすために100チャレンジして、30ぐらい実れば御の字だ」と思っているなかで、偶然はまるテクノロジーもあれば、そうでないものもあります。また、DXはシステムと同じで、複数社とやり取りをすると混線してしまうので、マクニカ様という1社に私たちのすべての課題をぶつけていきます。一方、マクニカ様は世界最先端の技と知を探り、「これは使えそうですね、やってみませんか」と私たちにご提案いただく。こうしたキャッチボールが、他の企業様より多いと感じています。

顧客側の事業主が自分でDXをしようとすると、自分で発見したDXと課題のマッチングができないはずです。結果、やろうとしてもできずに終わってしまいます。私はDXを課題解決のためのひとつの方法だと思っていますが、マクニカ様は常に寄り添いながら世界中で安くていいものを見つけ、技と知を組み合わせて私たちに提供してくださいます。社会課題の解決は、金澤さんや私の個人利益の増加につながっているのではありません。社会変えるインパクトを一緒にしているわくわく感が、おそらく価値共創的なダイナミズムなのです。

DXというトレンドは、少なくともあと30年は続くだろうと思っていますが、そのパートナーを見つけることが非常に重要です。マクニカ様には無茶振りもしていて、八代さんも四苦八苦しながら頑張ってくれていますが、やはり医療介護事業者は汗をかいている人が好きです。そういった意味では、生涯付き合っていくパートナーでいてほしいなと、私からプロポーズをしておきます。

八代:ぜひ、よろしくお願いいたします。では最後に慈恵会様が目指す未来や、マクニカへの期待を改めてお聞かせください。

丹野:今後は、確実に人口が減少します。青森県の人口減少を防ぐと言っても、岩手県や秋田県などの都道府県同士で取り合いをするだけで、マクロとしては減っていくわけですよね。私は、人口減少を止めるDXをなんとか起こせるのではないかと考えています。現在は生まれた子どもに対する手厚い政策があるかもしれませんが、第二子・第三子・第四子を産む政策やテクノロジーは、まだ発展途上です。

マクニカ様とは、個別事業の課題をソリューションによって解決してきました。これからはそれを社会課題が解決できるような標準的なところまで品質を高め、多くの方が導入し、自分のものにできるぐらいのものにできればと思います。世界にはまだ埋もれているテクノロジーがあるはずなので、マクニカ様と変わらぬお付き合いを続けるなかで、良い実験相手になり続けようと思っています。苦楽を共にできることが、伴走の一番いいところですからね。

八代:テクノロジーを探す方も伴走する方も、汗を大量にかき、一緒に共創活動を盛り上げていきたいですね。来年もこうしたテーマで、解像度とスケールをさらに上げてお話ができればと思いますので、引き続きよろしくお願いいたします。