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生成AIをマーケティングに活用 - 新たな顧客体験戦略とは

生成AIをマーケティングに活用 - 新たな顧客体験戦略とは

 商用利用を前提として開発された画像生成AIAdobe Firefly」はすでに多くの企業やサービスへと導入が進み、企業コンテンツの制作プロセスに変革を起こし始めています。顧客とのコミュニケーションに欠かせないコンテンツの生産性を向上させ、効果的な体験の提供によって、収益の向上に貢献することが可能です。

※:本記事は、20231112月開催の「MET2023」の講演を基に制作したものです。

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ビジュアル系生成AIの商用利用について

 マッキンゼーのレポートによれば、生成AIによる価値の75%は4つのビジネス機能に集約されると言われており、社内業務の効率化といった領域よりも、顧客対応やセールスアンドマーケティングといった対外的なサービス、製品訴求の領域の方が導入インパクトが高いと試算されています。

 しかし、生成AIは新技術であり、多くのメリットがありますが、同時にリスクも存在します。お客様へ提供されるサービスや、プロモーション広告等を生成AIによって構築していく場合に著作権のリスクを考慮する必要があります。商用利用において著作権を侵害しないことが重要ですが、これには2つのポイントがあります。

 ①安全な設計の生成AIを選ぶこと、②正しい使い方をすることです。日本の法律が許可しているからといって、他国での著作権侵害リスクを無視してはなりません。アドビは商用利用を前提とした生成AI「Adobe Firefly」を開発しており、学習データも提供者と直接連携しながら取得しています。こうした設計思想により、Adobe Fireflyは様々な商用サービスとの連携が実現しています。日本ではnoteとの連携が開始されており、最近ではLINEヤフー株式会社とも提携し、生成AIを商用利用する実績が積み重ねられています。

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 また、安全な設計の生成AIを選ぶことと同時に、正しい使い方にも配慮が必要です。生成AIが主体として作成したものは著作権が認められず、一方で人がAIを道具として使って創作したものは著作物と認められる可能性が高いと言われています。Adobe Fireflyは元々プロンプトを保存できる仕組みになっており、誰がどのようにコンテンツを作成したかといった来歴情報を記録できる仕組みにも対応しています。

 この仕組みは、コンテンツ認証イニシアチブといい、今問題になっているフェイク情報に対抗することを目的とした新しい取り組みです。この推進をアドビとX(旧:Twitter)、ニューヨークタイムズの3社が発起人として進めています。今後、生成AIに対しては各国でさまざまな規制が検討されています。どのような生成AIモデルを使い、どのように利用したかを管理することは、企業ガバナンスの観点からも重要性が高まっています。

生成AI事例から見る活用のポイント

 商用利用に関する話の次に、生成AIを活用した事例を紹介します。アドビのコンサルティング部門とクライアントのヘアケアメーカーが共同で進めているプロジェクトでは、生成AIを使用して電子メールの内容を個別にカスタマイズし、顧客体験を向上させる取り組みを行っています。店舗でのキャンペーンとデジタルのリテンション施策(再注文)を連携させ、お客様ごとにパーソナライズされた商品を提供しています。このプロジェクトでは、センサーで髪の状態をデジタル化し、顧客に適した提案を生成AIを使って送信することで、一人一人のニーズや課題に合わせた体験(ハイパーパーソナライゼーション)のプロセスを構築しています。

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 生成AIを使った電子メールのテンプレートでは、一人一人の顧客に合わせた文章と画像を生成します。画像生成においては、基本的なプロンプトを設計し、お客様のプロファイルデータに基づいて変数を入れ替えます。全ての画像を生成AIに任せるのではなく、一部の画像は実際の写真を利用し、生成画像と合成する方法もあります。このように、デジタル体験を進めるパラダイムが変わりつつあります。今まで分断されていた複雑なプロセスをシームレスに繋ぎ、AIと自動化により工業化していくともいえるでしょう。

スピード、スケール、ROIを向上するコンテンツサプライチェーンの再構築

  • 手作業 > AIとオートメーション
  • 分断されたプロセスやデータ > 接続されたフロー
  • 制作リソースは他力依存 > 民主化された製作環境
  • ブラックボックス > 透明性、信頼性

生成AIによる新たな顧客体験とは

 今後、生成AIは画像やロゴ、イラスト、3Dモデル、動画制作まで幅広く対応し、コンテンツ制作の自動化を推進することが期待されます。また、アドビはビジュアル生成AIだけでなく、大規模言語モデルとも連携し、ブランドのスタイルやトーンを保ちつつ様々なバリエーションのコンテンツを生成する機能も開発しています。こうした自動化技術を取り入れていくには、それぞれの企業がコンテンツ基盤を持ち、運用することが前提になります。

 例えば、デジタルアセットを管理する基盤とブランドのガイドラインを学習した生成AIモデルを組み合わせたコンテンツ基盤を活用し、お客様一人一人に最適化されたオンブランドのコンテンツ生成を大規模に行うことが可能です。プロセス全体の効率化に加え、お客様の体験を向上させて収益を増やすことができます。生成AIを活用したマーケティングで重要な視点は、コンテンツプロファイルデータと顧客の行動データとの連携です。

 収益性の高い、つまりコンバージョンされる可能性の高いコンテンツを効率的に生成するためには、どのようなコンテンツがコンバージョンに寄与したかといったデータが欠かせません。こうしたコンテンツ効果を分析するために重要となるのが、コンテンツの特徴を詳細に記述したコンテンツプロファイルです。オウンドメディアをはじめ、メール、アプリなどお客様との接点を通じて提供されるすべてのコンテンツプロファイルをデータ化して、お客様の行動データと関連付けます。こうすることで感覚的な傾向やコンバージョンに寄与するコンテンツ属性を理解し、より詳細な分析が可能になります。

 将来的には、AIが自律的に最適なコンテンツを生成する時代が到来すると考えられます。AIはキャンペーン実績データから最適なコンテンツを生成し、即時分析を行い、次回の生成に活かすことができます。これにより、顧客体験の解像度が高まり、お客様の行動データに基づいてコンテンツを最適化するPDCAサイクルが形成されます。コンテンツサプライチェーンの変革は、制作効率の向上だけでなく、顧客をより深く理解し、体験を向上させることを目指しています。

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 生成AIを活用したコンテンツサプライチェーンの再構築は、コスト削減とパーソナライズされた顧客体験の提供によって収益の向上を目指しています。競争を勝ち抜いている先進企業は既に生成AIの活用やプロセス整備を始めています。今後のマーケティング戦略立案の参考にアドビにお気軽にご相談ください。


参考CXMガイド:生成AIはマーケティングをどう変えるのか?

生成AIがもたらすマーケティングの可能性
https://business.adobe.com/jp/resources/guides/003430-marketing-potential-of-generative-ai.html