価値共創の進化系 ~エクスポネンシャルテクノロジーの増殖に対応するには?~
私たち人類は、生成AIをはじめとしたエクスポネンシャルテクノロジーにより、爆発的に変化する世界をいままさに目の当たりにしています。本記事では、今後それらのテクノロジーを正しく扱うべく、変化に対応しながら持続可能な価値を生み出す共創活動の進化について考えます。
※:本記事は、2023年11~12月開催の「MET2023」の講演を基に制作したものです。
【講演者】
目次
世界中が注目を寄せる、生成AIの今
入山:私は本当に、マクニカは世界の未来を担う企業だと思っています。スマホだけの競争が終わり、世の中が大きく変化していく過程で、今後はリアルとバーチャルの接合が非常に重要になっていきます。特に重要なリアル、つまり現場がもっとも強いのは、ドイツと日本です。すでにリアルとバーチャルを接合している日本企業のいくつかは海外でも成功を収めていますし、これから先は日本中の企業が同じ道をたどるでしょう。マクニカがハブとなり、その流れが世界中に広がっていくことをとても楽しみにしています。
佐藤:ありがとうございます。確かに、リアルは大事ですね。一方で、今回のテーマであるエクスポネンシャルテクノロジー、つまりデジタルの面では世界中が生成AIに注目を寄せています。2023年、世界の生成AIのスタートアップの資金調達額が前年比5倍の180億ドル、日本円に換算して2兆7,000億円に達していたことからも、大きな変化がうかがえます。
入山:先日、ディープマインド社の共同創業者であるムスタファ・スレイマン氏と対談しました。彼が昨年新たに立ち上げ、7,000億円を一挙に調達したインフレクションAIという会社と、同社が開発したAIチャットのPi(パイ)に私は注目しています。Piの対応言語は現在は英語のみですが、すごくフレンドリーで親しみやすいし、最新のデータまで学習しているので、今後間違いなく流行すると思っています。
佐藤:生成AIは、さまざまな種類が登場していますね。現在はテキスト生成系が最多で、画像や動画のビジュアル・メディア生成系や、プログラミングコード生成系などがその後に続いています。産業別では弁護士、マーケティング、教育などの分野に活用されていますが、入山先生、大学の教授に関してはいかがでしょうか。
入山:教師は、生成AIにとって代わられる筆頭候補だと考えています。私よりもいい問題を作る生成AIが活躍するなかで、学生の評価軸を試験回答だけで判断してもよいものかと、成績のつけ方にも悩んでいます。
原:リアリティの評価が求められる、ということになりますよね。
入山:はい。「何を言ったかよりも、誰が言ったかが重要」な時代になってきています。別のセッションでも数々の興味深い話が飛び出したと思うのですが、その登壇者だからこそ、その話に価値があるわけです。この考え方は企業にも当てはまり、うまく事を運ばないと他社との差別化は難しくなってしまいます。特に、コーポレートブランディングに課題がある企業は、いかにこの点を意識するかが大切です。
佐藤:原さんも、誰が言ったかが大事、その人の志が大事というお考えでしょうか。
原:そうですね。昨年もパーパス起点の共創というお話をしましたが、何を目指していくのかという志と、何をアウトプットするかが重要になってくると考えています。
佐藤:人間の気持ちにしっかりと軸があればよいとはいえ、技術の進歩が爆発的すぎてAIに追い越されてしまうのではないか、という危機感もあります。たとえば生成AIで作られた画像がフリー素材になるほどコモディティ化していたり、有名な作家が新作漫画のベースをAIで作ったりもしています。ほかにもAIアート動画、テキストからの動画生成なども行われていたりと、時間短縮の極みだと感じます。
入山:私は、運用型広告での活用にも期待しています。従来は広告制作に多くの時間とコストが必要でしたが、生成AIを使えばそれらを大幅に削減できます。たとえば、スポーツで活躍しそうな選手にあたりをつけ、広告起用の契約をあらかじめ結んでおきます。そして、試合の結果などによって即座にクリエイティブを切り替え、狙ったユーザーに配信して効果を最大化するといったことも可能になるでしょう。
佐藤:ちょっと変わり種ですが、マクニカではAIを活用した議事録・日報の自動生成が可能なプロダクト『おまとめ忍者』を提供しています。共創活動をしているお客様からの強い要望がきっかっけで生まれたサービスなのですが、音声やテキストで入力された内容をキレイにまとめてくれることが特徴で、実際にお客様にご利用いただいたところ、数時間かかっていたレポートが数分で完成するようになったそうです。これも共創エコシステムの一環ですね。
エコシステム VS エゴシステム
佐藤:ここからは価値共創の進化系ということで、エコシステムの話をしていきたいと思います。まず現在の状況ですが、インターネット・AI・メタバースといった第4次産業革命が終わろうとしている頃でしょうか。そして次なる第5次産業革命では、コンピューターと人間が融合するようなシンギュラリティポイントが近づいてきます。
AIが人間を追い越す日は今日かもしれず、社会を構成する基盤技術が劇的に入れ替わり、業界の境界線は崩壊を迎えようとしています。そんななか、「爆発的なエクスポネンシャルテクノロジーをほぼ体験した私たちが、ビジネスの世界におけるインパクトを乗り越えるための手段の1つが、エコシステムである」というのが原さんの仮説ですよね。
入山:原さんが考えるエコシステムとは、どのようなものですか。
原:さまざまな分野のプロフェッショナルが1つの志とリアルな目的に基づき、垣根を超え、有機的かつアジャイル的につながっていくことです。それを享受できなければ、どんどん発展するテクノロジーには追いつけず、周回遅れにされてしまいます。一方で、1社だけでできることには限界があります。お互いがうまく結びつき、ダイナミックケイパビリティをいかに形成するかが非常に重要だと考えています。
入山:数年前、プラットフォーマーという言葉が流行しました。そのころは「自社のデータを活用すれば、色々な企業と連携できる。だからプラットフォーマーになりたい」と、大勢の大手企業の社長や役員が、私の元に続々と相談にやってきました。しかし、実現した企業は1社もありませんでした。
冒頭でお話したように、日本にはリアルが強いという特徴があります。そのため、デジタル活用で色々なプレイヤーが連携して業界の垣根をなくせば、非常に強い存在になれます。しかし「プラットフォーマーになる」と宣言してしまうと、まるでおいしい部分だけを自分たちが総取りしようとしているような、野心めいたものが見え隠れしてしまう。そうなれば、当然ながら他の企業の協力は得られないでしょう。
だからこそ、第5次産業革命におけるシンギュラリティは日本にとってのビッグチャンスであり、企業同士の連携がもっとも重要なのです。その際にエゴがあっては確実に実現できないので、原さんのおっしゃるような仕組みが絶対に必要だと私も思います。
佐藤:エコシステムとエゴシステム、濁点がつくだけでまるで違うものになりますね。たとえば、とある音楽ストリーミング配信を手掛ける協調型のスタートアップと排他型の巨大プラットフォーマーを比較すると、前者のほうが数億人以上多くの会員を獲得しています。前者が成功しているのは、音楽関係の会社やグループ、サービス、インフルエンサーなどと幅広く連携し、アーティストとファンをつなげ、SNSでバズらせるといった仕掛けを積極的に施しているからです。
入山:非常にオープンだということですね。
佐藤:また、エコシステムにも新旧の境界線があります。旧エコシステムは、自動車の製造業などに代表されるように、同業者同士が戦う城下町モデルになっています。対して新エコシステムは、モバイル決済業界を例にとってみると、さまざまなプレイヤーの領域が重なりあっています。つまり、元は自分たちのテリトリーだったところが侵食されたり、逆に入っていったりすると。これが異業種との競争と共創であり、原さんのメッセージどおり、1社で実現できない課題を市場のなかでいかに解決していくかに結びつくのでしょう。
原:「常にこことここが連携する」と決まっているわけではなく、状況に応じて化学的に結合していくイメージですね。
入山:今後はおそらく、エコシステムとエコシステムの戦いや融合なども起こるはずです。特に、東南アジア・アフリカ・インドといった新興市場は既存のインフラなどが少ないがゆえに、先進国よりも先に新しいテクノロジーを取り込み、発展させることがあります。この現象は、リープフロッグと呼ばれています。実際、新興市場からは新しいエコシステムがどんどん誕生していますし、この流れはこれからより顕著になります。
たとえばアフリカは銀行の必要性が低いため、特定の通信会社がスマホや携帯電話に決済機能や送金機能を搭載させることで、金融会社の役割も担っています。また、荷物の配送を特定の住所ではなく、GPSを参照して、直接その場所に届けるといったケースもあります。私たちとはまったく違う感覚ですが、それゆえにエコシステム内の不要な部分を削ぎ落とせることに気づけるのです。先進国ではその削ぎ落としが難しく、足かせになる可能性があります。
佐藤:面白いですね。エコとエゴではなく、エコとエコがぶつかるという。
入山:そうですね。新興市場のエコはシンプルで、重いものがない。先進国のエコは「私もやりたい」「私も」という流れで、余分な要素が付け足されているイメージです。
原:今のシステムがないからこそ、新しいものをどんどん作りやすいわけですね。
佐藤:今後の外部環境は時間軸での新vs旧、そしてスタートアップvs大手といったように、多面的に捉えていかないと混乱しますし、誰と組むのが最適なのかを探ることも課題になりそうです。
入山:マクニカは日本の企業の中でも優れたネットワークが世界中にあるので、エコシステムも含めて持って帰ってこられると思います。
世の中を変える合言葉「My Story,Your Story,Our Story」
佐藤:「パートナー同士が協力し、エゴではなくエコでエンドユーザーに対して価値提供を行う構造がエコシステムのひとつ」というのが、マクニカの考えです。また、その構造を「Power of EcoSystem(パワーオブエコシステム)」と呼んでいます。
先ほどの生成AIにも当てはまりますが、技術は成熟しているものの必要なプロフェッショナルが集結しきれていない場合や法整備が追い付いていない場合、エコシステムの構築や、ユーザーに対しての価値提供が遅れることは珍しくありません。私たちもまさに、三重県は四日市市の自治体との取り組みでそれを実感している最中です。
交通課題などを抱える同市は街中の活性化を望んでおり、弊社は自動運転EVバスの提供をはじめ、さまざまなプレイヤーを巻き込むことで、エコシステムの構築を目指しています。必要なテクノロジーもアルゴリズムを含めて手に入っており、いつでもスタートできる状況です。
しかし、たとえば「路駐の車を避けるために対向車線にはみ出して走行するのはOKか? それを法律で許可するか?」という問題が生じると、「その対応をアルゴリズムやプログラムに埋め込んでよいのか、本当にオーソライズしてよいのか」という議論が起こります。そして、法やガイドラインの整備が行われない限りは議論が進まないので、従来とまったく違うレイヤーの人たちと連携して、システムを作らなければなりません。
入山:皆さんもご存知かと思うのですが、よく街中を走っている電動キックボード「LUUP」がありますよね。私は先日、早稲田大学で行った自身の授業に、Luupを創業した岡井社長を招待し、どうやってうまく普及させたのかを徹底的に訊きました。結果、日本でイノベーションを起こしたい皆さんにお伝えしたいのは、「戦略的にロビーイング部隊を作ってほしい」ということです。
日本はロビーイングが弱く、なにかと規制が多いと思います。サービスの提供を予定しているものの、当該事業分野での実績がなければ、政府との折衝が生じるかもしれません。その対応はとても大変ですが、同時にとても重要です。
岡井社長も国交省と警察庁を相手に徹底的にロビーイングをしたのですが、その前にあることをしていました。それは、コンソーシアムの創立です。何かを1社で進めようとした場合、役所などの機関は「あなたの会社が儲けるためなのでは?」と懐疑的な姿勢を見せます。しかし世の中を良くしたり、市の財政負担を軽減したりすることも織り込んだうえでコンソーシアムを創立し、必要な実証実験をひたすらに繰り返して事例ができてくると、やがて机上の空論ではないと納得してくれるわけです。
原:私たちも、地域に根ざしている企業、そのバックアップを担う企業、中央省庁などとタッグを組み、システム面も含めてしっかりとした1枚岩になれるかを一番最初に確認します。しかし、発言が曖昧だったり、トラブルがあったりするとチームが崩れ、実証実験の途中で外されてしまうこともあり得ます。そうならないためにも、色々なところでお話をしながら、私たちなりの見極めをしています。
佐藤:日本では優れた先進テクノロジーを持っていても、成熟した社会構造が足かせになることもあるというお話ですね。だからこそエコシステムの構築を目指すうえでも、地道な努力とエクスポネンシャルテクノロジーの組み合わせが重要になると。
原:マクニカの自治体チームは、泥臭いことしかやってないですよね(笑)。テクノロジーが前提ではありますが。
入山:佐藤さんがおっしゃったのは、本当に重要なことです。現場が強い皆さんの企業と、エクスポネンシャルテクノロジーが組み合わさると、ビジネスプラン上は最強のものが完成します。その実装時に生じる官公庁や政治家といったステークホルダーとの調整が、今後における日本の最大の課題であり、注力すべき部分です。そして、官公庁や政治家なども含めたエコシステムの構築にもっとも必要なのは利他の精神、つまり、何をすれば相手に得があるかを考えることです。
私の友人に、デロイト トーマツ ベンチャーサポート株式会社の斎藤 祐馬さんという方がいます。優秀な変革者である彼は、世の中を変える際には「My Story,Your Story,Our Story」の重なりが大切だと説いています。
「私たちは○○をしたい」を示すMy Storyは、当然ながら必須です。そこに加えて必要なのが、「○○すると世の中が良くなる」というOur Storyと、「○○になれば、あなたにも利益がありますよね」と交渉する相手の、Your Storyです。彼はこれらの関係を徹底的に考え抜き、各要素のポイントがベン図の中心で重なるようなストーリーを描きます。すると、話を受けた側も自分にとって得があると感じるので、同意を得られるわけです。私はこういった形でうまくまとめることが、エコシステムだと思っています。
佐藤:相手の利益や社会正義といった概念もあるなかで、やはり「世の中を変えていきたい」という志を同じくし、共感できるような相手と組みたいですよね。原さん、ここでNEXTAGE様とマクニカの、日本のわさびを救うための取り組みをご紹介いただけますでしょうか。
原:真妻わさびという日本の最高級わさびは、自然界で夏を2回越して、時間をかけながら成長します。日本にはわさびの生育に適した水のきれいな場所は多いのですが、台風による崖崩れや洪水で棚田が崩壊するなどの災害に見舞われることもあり、生産量が少なくなっていると。私たちはそういった課題に対してサステナブルな取り組みをするために、LED照明・AIなどの技術も活用しつつ、NEXTAGE様と協業させていただくことになりました。
入山:コンテナの中でわさびを作るって、すごいですよね。
佐藤:わさびのマーケットは日本国内だけで考えると小さいですが、原さんの志もあり、最終的には世界への展開を目指そうとしています。
原:シンガポールやフィリピンでは日本食ブームもあって、需要すごく多いみたいです。たとえば、ステーキに乗せたり。
佐藤:日本の伝統文化を守り、それを世界に広げてサステナブルにするための取り組みには、積極的にトライしたいですね。
入山:食べ物は人間の3大欲求に直結しますから、今後のビジネスでも確実に大きなウェイトを占めます。また、現在より世界のバーチャル化が進んだときに、より重要かつコモディティ化されにくいのは味覚・触覚・嗅覚の3つです。この分野は間違いなく成長するので、そういった意味でも食べ物や匂いには可能性があると言えます。
佐藤:確かに地球全体が小さくなり、宇宙に移住するとなった際に、食糧問題やエネルギー問題は必ずつきまといますから、今のうちから手を打っておく必要がありそうです。
原:月でもわさびを食べたいかどうかは分かりませんけどね。コンテナの中では葉のカットもロボットがしますし、遠隔監視ができるので、問題はないと思います。月は地球よりも発電効率がよいので、コンテナの壁一面にペロブスカイト太陽電池を付けて発電すれば、非常に安く済みますね。植物の成長は月の引力に影響されているという説もあるので、巨大なわさびが穫れるかもしれません。私は月の土地を持っていますので、冗談のような話ですが、真面目に考えています(笑)。
視聴者から寄せられた、3つの質問
佐藤:今回のセッションでは視聴者様からの質問もいただいており、いくつかピックアップできればと思います。まずは「今注目のエクスポネンシャルテクノロジーで、生成AI以外で面白いものはありますか?」という質問です。原さん、いかがでしょうか。
原:まず今回のMET2023リアル会場に展示したオルタ3のように、ロボティクスにAIを搭載し、アンドロイド化するという取り組みが挙げられます。次に、先ほど入山さんがおっしゃった匂いや味覚なども含めた生体データ、腸内環境データなどのバイタルセンシング技術もどんどん進化しています。特にこれとブレインテック、そしてAIのかけ合わせは今後大きな広がりを見せると思います。
佐藤:面白いですね。次に、入山先生への質問です。「入山先生は、生成AIを研究者としてリアルな実験や調査を行う際に、どのように活かせそうだと思いますか?」
入山:研究については、すでに圧倒的な影響を受けています。私が担当する経営学で、海外の学術書に投稿するような内容を書こうとすると、通常は2年かかります。ところが、現在では研究の検索やデータ収集・解析などをすべてAIが行ってくれるので、3ヶ月で済みます。一般的に入手できないデータは自ら集める必要がありますが、自分で頑張るのはほぼその部分だけですね。また、論文ではふさわしい文章を書くことがもっとも重要ですが、これもAIの得意分野です。
佐藤:入山先生は基本的には生成AI肯定派で、どんどん使ったほうがよいとお考えですか。
入山:うまく使えば世の中がよい方向に向かう勢いが大きく加速するので、そういう意味では、この流れに乗らないことはあり得ないと考えています。以前、知人と「将来の資本主義や民主主義は大きく変わっているだろう」という話をしました。そういった状況のなか、世の中に影響力をもつ方々はみな強い責任感をもっていて、考えなければならないことも多く、恐ろしさもあります。しかし、現在の流れを誰にも止められないこともまた事実です。
佐藤:やはり進化の過程では、体験して痛みを覚え、成長することを繰り返さなければ課題を克服できないのでしょうね。先ほどの、法整備などの話にも当てはまりそうです。
入山:そうですね。私の大学でも、先生が問題を作って採点する仕事はもはや不要だと思います。今後は私も含め、「大学とはそもそも何を提供するところで、何のために存在するのか?」を考える必要があります。そうすることで、「新しい時代の大学はこうあるべきだ」が見えてくるのではないかと。おそらく、皆さんのお仕事も同じではないでしょうか。
佐藤:ありがとうございます。次が最後の質問です。「マクニカさんは、さまざまなエコシステムで価値を生み出しているように思います。どのようにパートナーと会話を進め、どのように価値創出を進めていらっしゃるのでしょうか。」
入山:エゴシステムではなく、エコシステムを作れてるのはなぜかということですね。
原:私たちが、何者でもないことが大きいのかもしれません。大勢の技術エンジニアがいるので、ソリューション自体はどんどん作りますが、私たち自身はコア技術という食材を持っているわけではなく、それらを色々なところから運んできて、うまく料理しているのが実態です。いわば、コーディネーターという立ち位置でしょうか。
入山:マクニカは商社という特性上、自分たちがどんどん前に出て得をしたいという企業ではありませんよね。つまり良い意味でMy Storyが弱く、逆に2つのYour Storyをつなぎ合わせることで、面白いOur Storyを作り出せるのでしょう。
原:マクニカでは、ずっと「私は」ではなく「私たち(我々)は」と言っているので、Our StoryがDNAに根付いているのだと思います。出会った皆さんにとっての価値をよく理解し、良いもの、悪いものも含めて試行錯誤のうえでソーシングをしています。良いものというのは、テクノロジー・トップの考え方・組織・チームなど色々なものに当てはまります。これらをしっかり見極めながら、いかに最適なOur Storyを描けるかを、現場は常に考えてくれているはずです。
佐藤:ありがとうございます。本日は、「爆発的に増殖するエクスポネンシャルテクノロジーへの対応に重要なのは、エコシステムではないか」ということで、お2人に色々なインサイトをいただきました。なかでも、お話に出てきたMy Story,Your Story,Our Storyは根本的な考え方であると、お2人の話をうかがってしみじみと思いました。マクニカはこの時代を乗り越えるパートナーとして、皆さまと一緒にエコシステムを作ってまいりたいと考えておりますので、どうぞこれからもよろしくお願いいたします。