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歴史ある企業においてどのようにすればDXが実現できるのか - CSDXの事例を通じて

歴史ある企業においてどのようにすればDXが実現できるのか - CSDXの事例を通じて

 本格的なデジタル社会の到来で、DXの必要性が声高に叫ばれています。しかし、推進に注力してはみたものの、コストに見合った効果を得られていないケースも少なくありません。本記事では、ITベンダーに完全依存していたシステム開発をゼロから徐々に内製に移行し、社員1人ひとりのデジタル人材化も加速させている老舗企業・クレディセゾンの取り組みをご紹介します。

※:本記事は、20231112月開催の「MET2023」の講演を基に制作したものです。

【講演者】

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目次

外部ベンダー完全依存で、身動きできなかった10年間

 クレディセゾンは、以前はセゾンカードの事業を軸とした会社でしたが、現在は事業ポートフォリオの転換期にあります。その影響で、不動産ファイナンスや住宅ローンなどの利益が、インドを中心としたグローバルも含め、クレジットカードを上回る勢いで伸びています。

 しかし、最初からすべてがうまく進んでいたわけではありません。従来は実店舗をお持ちの企業様との提携でクレジットカードを提供してきましたが、昨今はお客様の消費活動がデジタルシフトし、シェアが転換しています。そのため、セゾンカードの会員数がいずれ頭打ちになってしまうことは見えていました。この大きな課題を解決するために、私たちはDXの必要性に強く迫られたのです。

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 速やかにDXに取り組めばよかったものの、それは叶いませんでした。2008年から進んでいたクレジットカードの基幹システム更改プロジェクトが、品質の問題や業界の業法の変化などの影響で延伸に延伸を重ねていたためです。このプロジェクトは、当初は2011年にカットオーバーする予定でしたが、最終的には2018年までかかりました。お客様の消費活動に合わせたデジタルシフトをもっとも求められるカード事業が、10年間も大きな動きをとれなかったのは、とても苦い経験だと言えます。

 また、基幹システムの開発を外部ベンダーに完全依存していたため、社内にノウハウが残っていませんでした。新しい取り組みを始めるにしても、社員がコードを書いたことはなく、技術にも詳しくない。加えて、基幹システムの更改費用が総額2,000億円以上だったこともあり、「これ以上ITにコストはかけられない」という風土が築かれていました。2019年にクレディセゾンに入社した私は、いきなり非常に苦しいスタート地点に立たされたのです。

 

フェーズ1 デジタル組織の立ち上げ(2019~2020)

 苦境ではありましたが、今までのやり方を攻撃して破壊しても、事態は進展しません。望ましいと思えるやり方を、まず小さくゼロから立ち上げる。そのために、私はシステムの内製開発を推進することにしました。ただ、新規開発したものを既存のシステムにいきなり組み込むことはできません。そこで、まずはカードだけで100以上あったシステムを3つのカテゴリーに分類しました。

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 この画像は、2019年当時の様子を表したものです。基幹システムに人・お金・時間のすべてをかけた結果、幹の部分にほぼすべてのリソースが注ぎ込まれ、枝葉は生きているものの、十分な栄養が行き渡っていません。

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 この状況を改善するため、次に先ほどの3カテゴリーごとに課題と対策を整理しました。

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 基幹システムは、更改した現在でもメインフレームCOBOLで動いています。ここに対し、SNSなどでユーザーの反応を見ながらフットワーク軽く新機能を追加していくことは、コストの面で現実的ではありませんでした。そのため、基幹システムは債権計算エンジンとして特化させ、普遍的な機能だけに絞り込みました。ほかにも、社内における連携のしやすさ向上を目的として連携基盤を開発したり、内製開発組織を立ち上げたうえでクラウドの活用を始めたりしました。最終目標は、画像のような実りのある木です。

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 内製開発組織は8人ほどの規模を目標に、最初はエンジニアの私1人からスタートしました。採用活動は2年間ブログだけで行い、プロジェクトをゼロから始めることや、趣旨に共感してくれた人を採用したい旨を発信し続けました。無茶な挑戦でしたが、まずは小さな立ち上げから、理想だと思える方法を実践してみたのです。

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 「20193月から募集を開始したならば、同年9月にはチームが完成しており、それなりにインパクトのあるプロダクトを出せていなければ遅すぎる」というのが、私の感覚でした。結果としては、ちょうど期日の91日に「セゾンのお月玉」というサービスをリリースできました。

 当初、既存のIT部門は私たちに対して「自分たちとは違う存在。お手並み拝見だ」という印象を抱いていたようです。しかし、やがて「この基幹システムと繋ぐときにどうすればよいですか?」などの会話が徐々に交わされるようになり、ときには共に食事に行くなど、交流が盛んになってきました。文化的なギャップが非常に大きいことから対立の可能性もありましたが、「健全な対立をしていこう」と落ち着きました。

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 フェーズ1ではこのようにチームの結成には成功したものの、いくつかの課題は残りました。クレディセゾンは過去70年以上、内製化の経験がありませんでした。そのため、社員や部門が内製開発組織との向き合い方が分からず「要件定義書を渡せば見積もりをくれるのか?」「RFPを書けばよいのか?」と戸惑ってしまったのです。

 また、既存のIT部門は有事の際に再発防止策報告書、場合によっては第三者アセスメントが行われるような、絶対にミスが許されない環境で業務を進めてきました。一方、内製開発組織の進め方はスタートアップ的であるなど、それぞれのカルチャーには根強いギャップがいまだに残っています。

 さらに、会社として外部依存の発注者という立場が長かったこともあり、「お金を払えば、私たちの考えていることをすべて実現してくれるのですよね」という、高圧的な態度をとってしまう方もいます。私が「発注者しぐさ」と呼ぶこの課題もまた、なかなか解決には至っていません。

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フェーズ2 全社DX:CSDXの策定と推進(2021~)

 小さく始めることの有用性が証明され、フェーズ2ではCSDXCREDIT SAISON Digital Transformation)の推進が決まりました。

 この戦略はプレスリリース・記者発表会・機関投資家などを通じて社内外に公開され、その際に私たちは、「お客様と社員のいずれかまたは両方に対して効果のあることだけを推進する」と宣言しました。一方で、幼い頃からプログラマーだった私は「新しい技術を利活用して業務を根本的に変えるのは当然ではなかろうか」という考えから「DX」という言葉に違和感を抱いていたため、DXを前面に押し出すことは控えました。

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 CSDXには、2つの大きな軸があります。1つ目は先ほどの内製化ですが、なんでも内製化することがベストではない点には注意が必要です。たとえば、OSやメールソフトは内製化をする意味は薄いでしょう。また、既存システムでベンダーが得意な領域は、一緒に組んで進める選択肢もあります。とはいえ、これからのデジタル時代に社内に技術者がおらず、内製化ができない状況はとても厳しいと考えられるため、これを軸の1つにしました。

 2つ目は今回の重要なキーワードである、バイモーダルです。この図では企業のIT戦略をモード1とモード2に大別して整理しており、モード1は老舗の大企業、モード2はスタートアップにありがちなパターンだと言えます。

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 モード1はトップダウンで大規模に進める際に有効だが動きが遅い、モード2はアジャイルで不測の事態にも対応しやすいが失敗すると致命傷になるなど、それぞれに色々な強みと弱みがあります。

 「隣の芝は青い」という言葉どおり、モード1の企業の方が「自社にはベンチャーのようなアントレプレナーシップが足りない」とおっしゃることもあります。しかし、かつてモード2のベンチャーに長年在籍し、その後モード1だったクレディセゾンにやってきた私は、モード2がベストだとは思いません。たとえば、モード2の企業ではテスト漏れで品質管理基準がおざなりになっているケースなども、ゼロではないからです。

 つまり、モード1とモード2両方の長所を併せもっていくことが、DXの現実解ではないかと私は考えています。しかし、皆さまの中には「すでにスタートアップやWeb系の企業を招いて取り組んでいるが、うまく進んでいない」という方もいらっしゃるかと思います。モード1とモード2はお互いの正義が異なるため、喧嘩し、否定しあうのです。これがバイモーダルの苦しさであり、日本企業でなかなかDXが進まないポイントの1つだと思います。

 その対策として、皆さまにぜひ覚えていただきたいのが「HRTの原則」です。

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 この原則は、多くの天才エンジニアを擁するGoogle社で重んじられています。同社のプロジェクトが成功する要因には、もちろんエンジニアの手腕もあります。しかし、何よりも重要なのは、ステークホルダー間でHRTの原則が守られていることです。また、Google社は検索プラットフォーマーとしてだけでなく、プロジェクトの成功に関する研究に多くの金銭と時間をかけている企業としても有名です。

 そのGoogle社が行き着いたのがこのHRTの原則だったことは、私たち日本人にとっては重要ではないでしょうか。謙虚さ・尊敬・信頼という言葉は和の文化に通ずるものがありますし、社長室の掛け軸にこの文字が飾られていたとしても、まったく違和感はありません。実は日本人にも受け入れやすいことがDXの一番の勘所なのかもしれません。

 変革のためには従来と異なる要素の採用が不可欠ですが、特に日本の大企業では、社内の一部が人体の免疫系のような動きをする可能性があります。たとえば製造業がジャパンアズナンバーワンを実現できたのは、中間管理職が綿密な連携で動き、上層部の意思を現場に即座に伝える連携プレーを強みとしていたからです。しかし、このやり方は今までと違う要素が出てきた際に、「あり得ない」と排除する動きにつながるおそれもあります。

 そうなればDXは失敗してしまうので、HRTの原則に沿って、お互いの短所に言及するのではなく、長所を活かし合うことが重要です。この原則こそがバイモーダルであり、DX推進に必須の要素なのではないでしょうか。

  人材の採用・育成・リテンションなどについても、苦労されている企業様が非常に多いと日々うかがっています。私たちの内製開発組織はゼロから立ち上げ、現在は120人以上が在籍していますが、これまでの4年半のうちに退職したのは、試用期間中だった方も含めて3名のみです。

 この定着率の高さは、私たちが人材の階層を3段階に分け、相当にこだわって採用や育成などを行っていることが要因です。中でも私たちが強く効果を実感しており、どの企業様でも再現できる可能性が高いと思っているのが、Layer2の「ビジネスデジタル人材」です。

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 クレディセゾンでは、デジタル人材になりたい方を希望制で募って育成する、いわゆるリスキリングを3年以上前から行っています。たとえば総合職や営業職の方が応募した場合、兼務ではなく完全に異動し、自分の選んだコースに応じてプログラミングやデータ分析を2ヶ月ほどの研修で習得します。応募者の年齢が20代前半から50代後半までと幅広いことも特徴です。

 この制度の特筆すべき点は、異動してきた人材が非常に頼もしいことです。確かにプログラミングだけを見ると、Layer1のコアデジタル人材の方が優れています。しかし、異動してきた方はそれまでの業務や部署の現実・取引先との関係性・お世話になった先輩・ライバルだった同期・可愛がっていた後輩など、あらゆるものをもってきてくれます。これにより現場における真のペインポイントが明確になり、そのうえで外部のプロ中のプロとタッグを組むことで、お客様が本当に求めているものを高い精度でつくることができるのです。

 また、内製開発に取り組み始めた頃に、プロジェクトが非常にうまくいっていない部署から「これ以上予算取りができないのですが、無料で開発をしてくれるというのは本当ですか!」と声をかけられたことがありました。しかし、成果の出ていないプロジェクトを延命するための内製開発組織には、なんの意味もありません。

 そこで私は「要件定義を今まで通りにはしないでください」と伝えたうえで、その部署の業務と苦労を実際に体験し、最終的には生産性の改善に役立ちそうな仕組みを作って提供しました。このように部署同士が伴走しながら開発を進める「伴走型内製開発」と、先ほどのリスキリング人材が掛け算のように組み合わさり、非常にうまく回っているのが現状だと思っています。

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 私たちは内製開発の完了を、改善の始まりと捉えています。そのため、最速ではリリースの20分後には修正を加えてデプロイすることもあります。これは、対象が基幹に近いシステムでも同様です。

 また、計画に対して必ず撤退基準を設けています。これはカジュアルな撤退を可能にするためのもので、後ろ向きな理由はありません。仮説が的中すれば予算以上のコストを投下しますし、予想が少し外れた場合はピボットすることや、ブレーキを踏むことを検討します。しかし、まったくダメで撤退基準を割り込んだ場合は爽やかに退く、といった具合です。失敗したときに誰かがペナルティを負ったうえに諦めるのではなく、カジュアルに撤退をすることで、失敗の積み重ねから成功をつかむことが重要だと考えています。

 計画しすぎないことも大切です。私たちの内製開発は、スマホアプリのいち機能からスタートしたのですが、スタートから4年半が経った現在では、10年と2,000億円をかけた基幹システムにまでメスが入っています。もし最初に計画を立てていたら、これは絶対にできなかったことでしょう。実際に触ってみて、「ここのAPIは使いづらい」「では次はこちらが優先だ」と進めてきたところ、後ろ側の課題が分かってきました。そして、それを繰り返しているうちに「随分遠くまで来たものだ」という感覚です。

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 スマホアプリからスタートした経緯は、現代においてスマホのお客様接点が大切だからです。軌道に乗った私たちは、その後もスマホでカードを最短5分で作れるサービスなど、さまざまなものをスピーディに開発していきました。

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 「DXは事業そのものを抜本的に変えるものだ」と思われがちですが、実はそうではないと私は考えています。たとえば、不動産のローンをスマホのボタン1つで気軽に契約できたとしたら、それはお客様視点でも困るはずです。従来からあるような、ミスが許されなかったり、紙のままの方がよいところは、一部の業務だけをデジタル化するぐらいがちょうどよい塩梅ではないでしょうか。

 一方で、クレジットカードなどはもともとがデジタルなので、デジタルを前提に業務プロセスをBPRなども含めて再設計するデジタライゼーションを行う必要があります。また、全員がスマホを持っていることを前提にすれば、まったく違うアプローチも可能です。デジタルの活用はこのように、事業の浸透率に合わせて行うことが重要です。

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 クレディセゾンは70年以上続く企業なので、何かを変えようとした際に「○○に影響が出るので、できない」と言われがちです。しかし、「仕方ないですね」と諦めてしまっては何も変わりません。そこで私たちはAS ISからのフォアキャスティングではなく、理想の未来から逆算をしてアクションを起こす、バックキャスティングを実行しています。

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 ほかには、社長以下役員が全員参加するCSDX推進会議を毎月1回開催しています。この会議は1時間のうち30分がアジェンダレスなので、会議中に話題の生成AIのデモを行うこともできます。昨今のDXやデジタル化の流れに追いつくためには、「これはこの部署で使えるのではないか」といったインタラクティブなやり取りを行い、素早く意思決定をすることが必要です。皆さまの企業でも、ぜひご検討ください。

 フェーズ2ではさまざまな取り組みや事例をご紹介してきましたが、私たちもまだ改善の余地が多くあると思っています。特に、内製開発組織の人数が120人にとどまっているため、全社的に優先度の高いタスクにしか対応できていない点は課題に感じています。

 部署によっては、リスキリングに応募した人材が抜けただけで、その部署のための内製開発が行われていないことに不満を抱いている現実もあります。これは早急に解決すべきことです。また、普段手作業で行っている業務の自動化など、現場の小さなDXはどうしても優先度が下がりがちです。しかし、むしろこれらを処理しなければ、加速度的にスケールしていくことには限界があると考えています。

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フェーズ3 全員によるDX(2023~)

  デジタル人材の不足解消に向けて2023年から取り組みはじめたのが、全社員1人ひとりによるDXの推進です。これまでシステム開発の選択肢は内製かITベンダーへの依頼の2つでしたが、事業部で作るという3つ目の選択を可能にしようというわけです。

 従来はこの図のように、戦略的重要性/予測不可能性が高いものはできるだけ内製、規模が大きいものや既存システム系はITベンダーに外注、移行テストなどミスが致命傷になりそうなものは二者のハイブリッドという棲み分けでした。実際には空白になっている赤い点線部分のシステムの数がもっとも多かったのですが、ここをまったくカバーできていなかったため、ローコードで事業部が作る手段を採ることにしたのです。

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 この戦略を進めるにあたり、社長にも大々的に宣言をしてもらうため、2023年の3月に「役員ノーコード・ローコードブートキャンプ」を開催しました。社長も含め、システム系以外の役員も全員が出席し、半日間自分でコードを書いてもらうという趣旨です。会の中では、分からないことがあって困っている社長に、社員が説明をする場面もありました。自分で実際に体験することで、「この部署のあの業務に対応できるのでは?」という気づきを得た方もいたようです。また、こうした取り組みを進めていることを社内外に知ってもらおうと、色々なところに取材をしていただき、話題になりました。

 事業会社でもっとも多いのは可視化と集計の自動化であり、こうした小さなDXが現場の困りごとになっています。そこで私たちはTableauを使って可視化を自動化したり、100個以上運用しているクレジットカードのシステムのデータを、DataSpiderで管理したりしています。現在はこのようにガイドラインを設け、ノーコード・ローコードのツールを事業部が使えるように進めている最中です。

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 可視化はTableauによるものが一番多いのですが、従来はダッシュボードの作成もベンダーに依頼していました。このやり方では要件定義や見積もりなどの工程が発生するため、どんなに急いでも3日以上は必要でしたが、現場が作り方を習得したことで、最短で翌朝にはダッシュボードを用意できるようになりました。結果、規模の大小に差はありますが、半年間で6個のプロジェクトと40以上のダッシュボードをリリースできました。もっとも効果のあったものでは、ダッシュボード1つで年間2,000時間以上の業務時間削減に貢献しました。

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 このような事例を受け、人材育成をさらに進めていこうとしているのが現状です。最初は内製開発組織が作り方を教えたり、サンプルを作って一緒に進めていたのですが、それではスケーラビリティの観点で限界があります。そこで、現在は1人のエバンジェリストを育成することで、その方の知見を事業部に広めてもらったり、詳しい人がどんな質問でも受け付ける時間を設けたりしています。

 こうした取り組みで、各社員が席を元の事業部に置きながら、デジタルツールを当たり前のように日々の業務で使えるようにすることを急ピッチで進めています。クレディセゾンの社員は国内で5,000人ほどですが、来年度中にはこの20%にあたる、1,000人がそこに到達できるようにすることが目標です。