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次世代産業として注目集まるサーキュラーエコノミー、持続性を高めるポイントはどこに?

次世代産業として注目集まるサーキュラーエコノミー、持続性を高めるポイントはどこに?

世界中が取り組んでいるサーキュラーエコノミー(循環型経済)は、日本でも政府の支援などによって徐々に進められています。そして、資源やエネルギーの有効活用は地球環境を守るだけでなく、同時に経済の発展を促すためにも不可欠なものとなりつつあります。

そんな状況のなか、マクニカではサーキュラーエコノミーの実現を目指し、国内はもちろんのこと、海外での事業展開にも注力しています。

今回は、マクニカで「サーキュラーエコノミービジネス部」の主席を務める阿部 博(あべ ひろし)に、サーキュラーエコノミー推進のポイントや、同部門での取り組みなどを訊きました。

目次

脱炭素社会で求められる「サーキュラーエコノミーゾーン」

――今回のインタビューにあたり、「サーキュラーエコノミーゾーン」という言葉を初めて聞きました。これは、どういったものなのですか?

阿部:サーキュラーエコノミーゾーン」とは、スマートエネルギーを細かく分けた区画、すなわちマイクログリッド単位で運用するエネルギーゾーンと、サーキュラーエコノミーとの組み合わせを想定した言葉です。

サーキュラーエコノミーに必要なスマートインフラを作る場合、ゾーニングがポイントになってきます。そして、そこに対して地域開発や事業開発を行い、地域最適からやがて全体最適を目指すと。私たちはその推進のお手伝いをしており、その概念を分かりやすくお伝えするときに、サーキュラーエコノミーゾーンという言葉を使っています。

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――サーキュラーエコノミーの実現に向けては、どんな取り組みがなされていますか?

阿部:日本では環境省が地域特性を活かすサーキュラーエコノミーを推進するために、自治体に交付金を出し、バイオガスや廃棄物を使った発電、各地で作った農産物を活用するCo2削減の仕組みづくりなどを促しています。つまりサーキュラーエコノミーを、事業と結びつけてもらおうとしているわけです。

取り組みへの参画は公募制で、各地の自治体がたくさん手を挙げています。2023年8月に4次公募があり、そこが一番多く予算がとられていて、1つの自治体につき50億円が出ます。それを100の自治体向けにやるので、非常に大掛かりですね。

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出典:「脱炭素地域づくり支援サイト」(環境省)https://policies.env.go.jp/policy/roadmap/preceding-region/202391日に利用)

 

いまは世界中で、SDGsの推進が掲げられていますよね。サーキュラーエコノミーはカーボンニュートラルなども含め、その目標に多面的に貢献するものが多いので、国が注力しているというのもあります。日本では2050年までのゼロカーボン達成が宣言されているので、自治体の地域特性を活かした取り組みが必須と言えます。

ちなみに、Webで「脱炭素先行地域」と検索すれば色々な事例を見られるので、ぜひ皆さんも試してみてください。

――サーキュラーエコノミーゾーンをより拡大していくためには、どういったことが求められますか?

阿部:サーキュラーエコノミーを事業化して、取り組みを推進する側にもメリットが生まれる状況をつくり、サイクルを回していくことですね。そのためには、「やる側も得をしますよ」ということを理解してもらうのが非常に重要です。

たとえば不要なモニターを処分する場合、ただ廃棄するのではなく、再利用すればコストを削減できます。場合によっては、静脈産業(※1)につながるビジネスを生み出せるかもしれません。こうした考え方をするには、まず自分たちが何をどのくらい廃棄しているかなどの把握も含め、メリットのプランニングをすることが求められます。その仕掛けづくりへの理解を得ることも大切ですね。

またESG投資(※2)でサーキュラーエコノミーの仕組みを社会に適合させ、そこで得た利益も追加投資していくことが、現代の経済施策の本流と言えると思います。

※1:使用済み製品や廃棄物の処理・処分・再資源化を行う産業。

※2:Environment(環境)・Social(社会)・Governance(ガバナンス)、3つの単語の頭文字をつなげたもの。それぞれに配慮した事業を行っている企業に対して投資すること。

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経済成長エンジンとしてのサーキュラーエコノミー

――サーキュラーエコノミー推進のメリットを知るには、どうすれば?

阿部:身近なところから取り組みを進めるといいですね。一番分かりやすいのはゴミなので、まずはゴミを減らしたり、廃棄コストを下げたりと。よく言われるのはペットボトルで、溶かしてセメントにする、分解してもう一度同じ形に再生するなど、色々な使い方があります。プラスチックやビンも同様ですね。またテレビやモニターなら銀、パソコンならレアメタルを取り出して再利用できます。こういったものは、意外とお金になりますね。

あとは電気代がどんどん上がっているので、電気の消費量を削減したり、自分たちで作ったものを消費したりするのも有効です。

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最近ではシェアリングにも注目が集まっていて、車・建物・洋服など色々なものがシェアされていますよね。メルカリのようなフリーマーケットサービスも、サーキュラーエコノミーの一環と言えます。いずれ個人が所有しているものをデータ化して、色んな人とシェアできるような仕組みができれば、さらに新しいマーケットが生まれる可能性もあると思います。

こうした取り組みの1つひとつがつながって、やがてサーキュラーエコノミーゾーンが作られていくわけです。

――サーキュラーエコノミーについて、海外の概況はどうですか?

阿部:特にヨーロッパはかなり大胆にビジネス方面に舵を切り、サーキュラーエコノミーを次世代産業として強く意識しています。たとえば太陽光パネルや蓄電池、その材料すらも自分たちで作ろうとしています。私たちも、バイオマスやバイオガスのソリューションをヨーロッパのベンダーから調達しようと考えているほどです。

また海外はゴミに対する意識も高くて、極力ゴミを出さないようにという動きもかなり進んでいますね。たとえば多くの資源を使っている北米では、テクノロジーを使ってゴミの量を減らそうとしています。

日本でもサーキュラーエコノミー推進のために色々なところで声かけがされていますが、海外と比べるとまだ遅れている部分もあるので、ネジを巻いてしっかり頑張らないといけないかな、という感じです。

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▲ドイツのバイオガスプラント。

 
――日本の取り組みが遅れている原因はなんですか?

阿部:一言で言うと、法整備や権利の問題です。たとえば電気の場合、電力会社の営業区域がきっちりと分かれているので、蓄電池を使った電気の細かい分配などが、今のレギュレーションではできないんです。先ほどお話したヨーロッパでは、そういった規制が改定されて、電気の取引が解りやすく活発に行われています。

あとは、水素で走る車も例として挙げられます。日本は実証実験もまだまだですが、ノルウェーではすでに路上をたくさん走っています。ノルウェーは水力発電で作り出した再生エネルギーが余っていて、そこから水素を作れるんです。

さらには政府が補助金を出し、その水素を使った車を走らせるように取り計らっているので、メーカーも水素で走る車をたくさん作り、それが普及すると。ヨーロッパではこうした流れを昔から汲んでいて、仕組みが完成しています。

私たちも、日本での事業展開は難しい部分もあると感じたので、フィジーやタイなどの海外にもチャレンジしています。

マクニカでは自治体との連携や、海外での取り組みも

――マクニカのサーキュラーエコノミー事業部は、どんな取り組みをしていますか?

阿部:まず地元の横浜周辺では、地域の食品廃棄物・農業廃棄物の地域内処理と残渣の再利用、プラゴミの再利用、再エネづくりに向けた実証実験などを検討しています。それ以外の地域では、スマートグリッドを活用したエネルギーの地産地消の最先端モデルの検証を進めており、これを起点にサーキュラーエコノミーを推進したいと考えています。

また各自治体と連携して、脱炭素先行地域に採択されるためのサポートを行っています。具体的には地域に合わせた戦略の提案・組織づくり・提案書の作成などですね。いわば事業計画をつくる、コンサルティングのようなものです。

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出典:「地域脱炭素ロードマップ(案)【概要】~地方からはじまる、次の時代への移行戦略~」(国・地方脱炭素実現会議)https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/datsutanso/dai3/siryou1-2.pdf202391日に使用)


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出典:「地域脱炭素ロードマップ(案)【概要】~地方からはじまる、次の時代への移行戦略~」(国・地方脱炭素実現会議)https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/datsutanso/dai3/siryou1-2.pdf202391日に使用)

 
海外でも、複数の取り組みをしています。たとえばフィジーでは、地産地消の再エネグリッドの構築計画を立てて推進したり、バイオガス発電の実現を探っている最中です。

あとはベトナムのダンですね。ある大学が移転をするのですが、ひとつの街くらいの大きさがあるので、そこに対して色々な提案をしています。また、その跡地にイオンのショッピングモールが建つ予定なのですが、そちらもかなりの規模なので、新しいテクノロジーを導入できないかを協議しています。

そういったケースは日本だと国や自治体が進めたり、先ほどお話したような規制があったりしますが、海外だと一般の事業者が開発を担当するんですね。土地の大きさが何百・何千ヘクタールにも及ぶ場合は、大きい不動産開発レベルなので巨額のお金が動くし、その分儲かります。つまり色々な企業が「ウチがやる」と名のりを挙げて、結果として開発が進むと。しかも街同士の競争になることもありますから、より発展するわけです。

そして今は世界的にSDGsの推進が掲げられているので、新しく開発されるところにはその対策となる技術が導入される。そこに注目が集まると、ESG投資が行われやすい。これが、いまの世界の大潮流となっているんですね。なので、私たちもそこに適合できるサービスを作っていく必要があると考えています。

――今後は、サーキュラーエコノミーをどのように推進していきたいですか?

阿部:まずは、サーキュラーエコノミーゾーンを拡大させたいですね。そのためのグリッドづくりには現時点では高いハードルがありますが、ゴミ処理や省エネなどといった部分ごとのアクションは着実に進んでいるので、これを継続します。

そして、それらが色々なところで使われ始めるとコストが下がってくるので、お客様へより最適な提案をしやすくなるかなと。その流れが発展すれば、グリッドづくりを進められる可能性もきっと高まると考えています。

まとめ

今回はインタビューを通じ、サーキュラーエコノミーが今後の経済発展のカギをにぎる重要な要素であることが分かりました。特に先進的なヨーロッパの事例は、日本での取り組みを進める際の大きな参考指標になると考えられます。

しかし一方で、日本では法規制などの問題で推進が遅れている部分も明らかに。これに関しては長期的な視点での対策が求められますが、千里の道も一歩からと言います。

個人でもゴミの量を減らしたり、電気を節約するなど、まずはできることから少しずつ実行していくことも、サーキュラーエコノミーの実現には欠かせないと言えるでしょう。



■マクニカ サーキュラーエコノミー事業 Webサイト

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