世界初公開の機体も展示! 「Japan Drone / 次世代エアモビリティEXPO 2023」取材レポート
突然ですが、みなさんは「ドローン」をご存知でしょうか。そう、機体に装備された複数のプロペラで主に空を飛ぶ、あの機械です。
テレビのバラエティ番組やニュースなどでもよく取り上げられるため、見たり、聞いたりしたことがあるという方は多いかもしれませんね。しかし実物にはなかなかお目にかかれない、ちょっと珍しい存在だったりもします。
そんなドローンや、次世代の移動手段とも言われる「空飛ぶクルマ」が世界中から集まる2つの展示会「第8回Japan Drone 2023」と「第2回 次世代エアモビリティEXPO2023」が、2023年6月26日から28日まで、千葉県の幕張メッセで開催されました。
そしてマクニカは、同展示会に出展された株式会社ジェピコ様(以下、ジェピコ)協力のもと、新たな価値を創造する共創基盤Re:Alizeを、同社のブースに展示させていただきました。これにともない、今回は筆者が本イベントの現地取材を行ってきたため、その内容をレポートとしてご紹介します。
※本記事で使用している写真は、いずれも取材対象の企業から撮影・使用許可を直接いただいたものとなります。
目次
- 1億画素のカメラ+ドローン+AIの可能性
- 実際に人が乗れる、巨大な機体を発見!
- 農業でも大活躍中のドローン
- 2030年には一般普及か? 高まる物流ドローンへの期待
- 持ちつ持たれつ? ロボット+ドローンの融合
- ドローンの戦場は、空だけにあらず!
- まとめ
1億画素のカメラ+ドローン+AIの可能性
まず、今回の出展にご協力いただいたジェピコのブースに伺いました。さっそく展示物について担当者さんに尋ねてみると、「ドローン搭載用の1億画素のカメラを紹介している」とのこと。「1億!?」...と、もはや聞いたことのない数字に驚きを隠せませんでした。
このカメラは「Phase One P3 Payload」という名称で、橋やダムなどのインフラ点検・検査などの利用を想定したものです。
同じ位置から約4,000万画素のカメラで撮った写真と、「Phase One P3 Payload」で撮った写真の違いをパソコンの画面で見せてもらったところ、その差は歴然でした。写真を同じ拡大率にしたとき、前者は少しボヤけていましたが、後者はボルトの螺旋部分までハッキリ見えました。
約4,000万画素のカメラで撮った写真。
「Phase One P3 Payload」で撮った写真。
上の写真よりもボルト部分に寄っていますが、撮影位置は同じ。
つまりこのカメラでは、離れていてもより鮮明な写真を見られるのです。
また、「Phase One P3 Payload」には「ハイダイナミックレンジ」という機能が備わっています。
通常は極端に暗い、もしくは明るい場所で写真を撮影すると、何も見えなかったり、光で白飛びしてしまいます。しかも、明るさを補正してもほとんど変わりません。しかし「Phase One P3 Payload」で撮影した写真は補正をかけることで、撮影したものがちゃんと見えるようになるのです。
「Phase One P3 Payload」パンフレットより、橋のたもとを撮影した場合の例。
右上の写真は未補正で暗く、破損部分がよく見えませんが、
補正をかけると左下の写真のように鮮明になります。
また遠くからの撮影でもクッキリ拡大できるのは、やはり1億画素の為せる業なのでしょう。
さらにジェピコは、株式会社IMAGEONEが提供する「PIX4D matic」や「PIX4D Inspect」も紹介していました。これらは撮影した画像から3Dモデルを生成したり、アセットを管理するためのツールです。
直近ではさまざまな建造物を3Dモデル化するための取り組みとして、廃校になった高校をドローンで撮影する実験なども行っているそうです。
昨今はドローンで撮影した画像をAIで分析し、点検・保守などに役立てる技術が普及しており、その需要はこれから高まっていくと思われます。その際「Phase One P3 Payload」のような高性能のカメラを使用し、鮮明な写真をAIに渡せば、分析結果もより高度で正確なものになるでしょう。
Re:Alizeの展示。風車の劣化部分を解析している様子です。
風車の羽根はとても高い場所にあるので撮影が大変ですが、ドローンならなんのその。
ジェピコは4つの企業と共同でブースを展開しており、
そのなかにはドローンの展示も含まれていました。カメラもバッチリ搭載。
実際に人が乗れる、巨大な機体を発見!
次に訪れたのは、GMO INTERNET GROUP株式会社(以下、GMO)のブース。同社は今回のプラチナスポンサーということで、会場内で最大規模のブースを展開していました。
そこで見つけたのはなんと、人ひとりが乗れる巨大な機体でした。
近くで見ると、迫力満点!
この機体はアメリカのLIFT AIRCRAFT社製で、名を「HEXA」と言います。HEXAは2023年3月、大阪城公園にて、日本では初となる国の許可が必要な屋外スペースでの有人飛行を実現しました。
展示会当日はHEXAの体験搭乗も実施しており、見た目のインパクトも相まって、長蛇の列ができていました。
また上の写真にも写っていますが、同社の本展示会におけるテーマは「すべての空にセキュリティを」となっており、ステージでは空の安心・安全を守る暗号セキュリティや、サイバーセキュリティの技術について講演が行われていました。
筆者は「空とセキュリティがどう結びつくのか?」と思いましたが、担当者さんから話を聞いて納得。ドローンの飛行にはGPSなどの通信を要するため、そこに対して攻撃(ハッキングなど)をされると墜落したり、最悪の場合、地上にいる人に危険が及んだりするというのです。空からいきなりドローンが降ってくると考えると、確かに怖いですね。
GMOのような企業の優れたセキュリティ技術が、空と私たちの安全を守ってくれることを切に願い、筆者は次のブースへと向かうのでした。
農業でも大活躍中のドローン
続いてやってきたのは、株式会社セキドのブース。ここにもさまざまなドローンが展示されていましたが、特に目を引いたのは、本体の中央あたりに謎のタンクを搭載した機体でした。
早速担当者さんに話を訊いてみると、これは農業用のドローンで、「AGRAS T10」という名称とのこと。真ん中のタンクには農薬を入れ、空中から作物に散布。1ヘクタール(※1)に対し、10分くらいで作業が完了するそうです。
※1:甲子園球場の野球グラウンド1つ分より、少し小さいくらい
さらにその隣には、「AGRAS T10」よりも大型の「AGRAS T30」が展示されていました。
「AGRAS T30」は本体とともにタンクが大きくなっており、中に肥料を入れて空中から散布できます。こちらは2ヘクタール(※2)に対し、10分くらいで作業が完了するそうです。ちなみに、「T10」「T30」はタンクの容量(リットル)を示しています。
※2:甲子園球場の野球グラウンド2つ分より、少し小さいくらい
また上記のドローンには5つのカメラがついており、作物が反射した太陽の光を読み取り、その度合いから作物の生育状況を可視化できます。
人が畑で農薬や肥料を散布する場合、タンクを担いでの移動や運搬が大変なことに加え、撒きムラができてしまうなどの問題があります。しかし「AGRAS T30」などのドローンを使えば、そういった問題を解消できそうです。
これまで、生育状況に応じた肥料散布量の調整などはいわゆる「職人ワザ」でした。「こうしたテクノロジーの活用によって、少子高齢化で働き手が減っている農業に興味を持ってくれる人が増えれば嬉しい」と、担当者さんは語ってくれました。
2030年には一般普及か? 高まる物流ドローンへの期待
取材はまだまだ続きます。今度は真っ白なボディが特徴の、大きめのドローンが目に留まりました。
ここは福島の企業「イームズロボティクス株式会社」のブースで、この機体は「イームズ式E600-100型」といいます。
同社はドローンを使った物流事業を2030年までに本格的に展開することを目標に、ドローンの型式認証(※3)やライセンス(≒免許)を取得など、さまざまな取り組みに注力している...と、担当者さんが熱く語ってくれました。
※3:国土交通省が航空法に基づき、産業など特定の目的に使用されるドローンの設計・製造過程・強度・構造・性能などが安全基準・均一性基準に適合するか検査する制度。
また物資輸送のためには実証実験が必要で、まずは200~300人ほどが在住する地域からスタートし、次に1,000人くらいの地域、やがて都心へ...というプランを立てているそうです。
機体の下には、コンテナ格納スペースが!
「イームズ式E600-100型」の積載荷重は5kgだそうですが、事業として展開する際には少々心もとない数字...? ということで、今後はより重い荷物を運べるドローンの開発を目指しているそうです。また同社のブースでは来場者に「どのくらい運べるドローンなら空を飛んでいてもいいか(飛んでほしくないか)」という趣旨のアンケートを行っていました。
筆者が見たときには、20kgを運べるドローンで安全が確保されていれば飛んでもいいという、
夢のある回答が最多でした。筆者ももちろん、一番多いところにシールをぺたり。
同社のブースにはほかにも、風量をリアルタイムで計測するセンサーなどが展示されていました。空を飛ぶドローンは風の影響を大きく受けるため、遠隔地で飛ばす際に、現地の風量で飛ばせるかどうかを把握するためのものなんだとか。
会場ではミニ扇風機でセンサーに風を当て、その様子をモニタリングしていました(緑色の部分が風)。
ヘリコプター型のカッコいい機体も展示。こちらは測量に使うものでした。
持ちつ持たれつ? ロボット+ドローンの融合
「ロ...ロボットがいる!」と思わず足を止めたのは、Ugo株式会社と株式会社ジャパン・インフラ・ウェイマークの共同出展ブースでした。
このロボットは、ugo Pro(ユーゴー プロ)という名前。エレベーター乗降やアームを使ったボタン操作を自律で行うことができ、ビルの巡回といった現場ですでに活用されています。そして背面下部の飛び出した部分は、なんとドローンのドックになっており、ドローンの充電や発着ができるのです。
ドローンとドック部分。エレベーターで引っかからないように折りたたみ式になっており、
さらにドローンが落っこちないように機体固定装置も付いています。
まさにロボットとドローンの融合(ユーゴーだけに...)とも言うべきこのソリューションは、工場やビルのインフラ点検において、お互いがサポートし合うようなかたちで活躍するそうです。具体的には、下記の通りです。
■ugo Pro
【強み】稼働時間が長く、広いところをくまなく点検できる(約4時間)
【弱み】サイズが大きく、狭いところは点検できない
■ドローン(このときはSkydioという機体)
【強み】機体が小さく、狭いところも点検できる
【弱み】バッテリーの都合上、稼働時間が短い(約27分)
つまり点検が必要な現場の基本的な移動はugo Proが行い、必要に応じてドローンがドックから発進! 狭いところを点検し、またドックに戻ってきて、充電しながら再びugo Proと一緒に移動...という流れになります。
テクノロジー同士の見事な組み合わせに、脱帽の一言でした。
ドローンの戦場は、空だけにあらず!
最後にやってきたのは、巨大な「水槽」が置いてあるブースでした。そうです。ここで展示されていたのは、水中で活躍するドローンだったのです。なお同ブースはドローンメーカーのQYSEA、販売を手掛けるCFD販売株式会社および、株式会社ジュンテクノサービスの共同によるものでした。
ここでも、ドローンを実演操作していた担当者さんに突撃取材を敢行。この機体は「FIFISH(ファイフィッシュ)」というシリーズで、上記写真のものは初心者でも使いやすいエントリーモデルとなっています。
水中用ドローンの用途について尋ねたところ、主なものは点検作業・岸壁の状態や生態の調査(水のサンプル回収)という回答が。また意外なところでは、「魚の死骸の回収」にも使われているそうです。魚の死骸は水中で放置していると、病気を振りまく原因になるのだとか...。ドローンは環境保全にも、一役買ってくれているわけですね。
CDF販売株式会社においては、最近では空用よりも水中用ドローンの問い合わせが多いらしく、注目が集まっていることがうかがえます。また消防庁も、水難事故対策のためにドローンの導入を積極的に進めているようです。
まるで魚のように自在に泳ぐドローンは、とても愛くるしかったです。
なんと、この日が世界初公開だった「FIFISH E-GO」。貴重な瞬間に立ち会えました。
まとめ
今回はさまざまなドローンを紹介してきましたが、いかがだったでしょうか。
いくつかのブースで耳にしたことですが、ドローンの発展は凄まじいスピードで進んでおり、次々に新しいモデルが登場しているそうです。つまりそれだけの需要があり、注目されているということですね。
ドローンにおける世界シェアの大半は中国が占めているそうですが、どんなかたちであれ、これからは日本での活躍の機会も増えていくことでしょう。そしてドローンは産業をはじめ、私たちの生活をきっと便利にしてくれる存在だということを、この展示会は教えてくれました。
■マクニカが提供する、新たな価値を創造するための共創基盤 Re:Alizeの詳細はコチラ!
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