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「モビリティ×エンターテインメント」で新しいまちづくり 〜みなとみらい21地区で、5Gを活用した自動運転の実証実験を実施〜

「モビリティ×エンターテインメント」で新しいまちづくり 〜みなとみらい21地区で、5Gを活用した自動運転の実証実験を実施〜

「ちょっと病院へ」、「ちょっと買い物へ」、といってすぐに目的地にアクセスすることができるのは、市街地に居住する特権かもしれません。マクニカにおける自動運転シャトルバスの実証実験はこれまで、いわゆる過疎地の交通難民へ向けた、住民の足としての機能を持たせるものが中心でした。しかし、自動運転がもたらす変化はそれだけではありません。今回マクニカがみなとみらいで行った実証実験の特筆すべき点は、「移動×エンターテイメント」という、モビリティの新しい価値を探るものということです。そこで横浜市の次世代の街づくりに向けた本実証実験の内容を、スマートモビリティ事業推進部 営業担当の谷口へ取材しました。

目次

地域課題の解決だけでなく、モビリティの新たな価値を模索する

──マクニカのモビリティソリューション事業は何を目指しているのでしょうか?

私たちマクニカは、モビリティソリューション事業を通じて、「社会課題・地域課題の解決」を目指しています。国内では公共交通機関が不足してきている自治体が多く、特に高齢化や過疎化が進んでいる地方では、「移動難民」の問題が深刻です。高齢になると車の運転が難しくなるため、医療機関の受診や買い物など、日常生活に必要な移動ができなくなり困っている方が増えていますよね。

このような問題を解決するには、「誰もが自由に、便利に利用できるモビリティソリューション」を社会実装することが必要と考えています。そのツールの一つとしてマクニカが提供しているのが、自動運転EVバスです。これまでに日本各地で自動運転の実証実験を行ってきました。

──移動手段を提供するために、自動運転が役立つということですね。

その通りです。ただ、マクニカが目指すのは「移動手段」の提供だけではありません。社会課題や地域課題を解決した上で、新たな価値を創出することもできると考えています。今回のみなとみらいでの実証実験では、「モビリティ×エンターテインメント」という切り口でその可能性を探りました。

──「モビリティ×エンターテインメント」とは、どういうことですか?

例えば、走行している場所に合わせて、周辺の観光スポットやお店の情報をリアルタイムで見られるようになれば、移動中も楽しめるようになりますよね。「あの車に乗りたいから、あそこに行く」というように、その地域に足を運ぶ動機がうまれることもあります。訪れる人が増えれば新たな消費が生まれ、地域経済の活性化にもつながります

横浜の未来を創造するための実証実験を実施

──横浜の観光地「みなとみらい21地区」で行った実証実験について詳しく教えてください。

本実証実験は、2023年1月27日、28日に開催された「YOXO FESTIVAL 2023 ~横浜でみらい体験~」にて、次世代の街づくりの一環として実施しました。マクニカが持つ最先端技術やソリューションを活用し、自治体や他企業と「共創」することで、横浜市の観光振興や交通インフラの発展につなげようという期待がありました。

具体的には、日本丸メモリアルパーク敷地内でのデモンストレーション走行を行い、車内ではスマートグラスを用いた未来型の観光体験を提供しました。展示エリア内には、自動運転EVバスの遠隔監視ディスプレイを設置することで、来訪者に自動運転EVバスの運行状況を案内しました。

──なぜ、みなとみらい21地区だったのでしょうか?

横浜の次世代の街づくりに参加するためです。横浜市では、産学公民が連携して、みなとみらい21地区を最先端技術のトライアルが日々行われる未来都市にしようという構想があります。本社が新横浜にあるマクニカにとって、横浜は身近な地域です。以前から最先端技術を活用して街づくりに貢献したいと考えていましたが、街づくりを行うには一社のみでの実現は難しいです。横浜市を中心とする「横浜未来機構」との共創を進めながら、横浜の未来を創造するための実証実験を積極的に推進していきたいと思います。

「自動運転の遠隔監視」と「未来型の観光体験」は、5Gの活用がポイント

──今回の実証実験は、5Gの活用もポイントの一つでしたね。

はい。今回はNTTコミュニケーションズご協力いただき、5Gと連携して実証実験を行いました。低遅延の高速通信回線である5Gは、自動運転車両の遠隔監視には欠かせない技術であり、常に車両や周辺環境の情報をリアルタイムに取得するために必要です

現在、マクニカが目指しているものは、レベル4の自動運転(特定条件における完全自動運転)の実現です。レベル4ではドライバーがいなくても運転できるようにするため、車両の走行位置や運転状況を遠隔で監視できるプラットフォームが必要です。今回の実証実験では、マクニカが開発した「マクニカ・モビリティ・データ・プラットフォーム(MMDP)」と5Gの連携によって、遠隔監視が実現しました。このMMDPは、もともとは管理者向けのシステムですが、展示ブースの一角にディスプレイを設置して、どのようにして自動運転が行われているのかを体験していただくため、一般のお客様にもシステム画面を見てもらえるようにしました

──遠隔監視システム以外に、5Gを活用したところはありますか?

自転運転の車内でスマートグラスとNTTコノキューのシステムを用いて、スマートグラス越しの風景と周囲の観光情報を同時に見られる「未来型の観光体験」を提供しました。高速転送が可能な5Gを活用して、目の前の景色とスマートグラスのコンテンツが遅延なくシンクロするようにしたんです。

今回の実証実験で、「安全な自動運転の実現」と「移動時間を楽しめるコンテンツの提供」の両面において、まさに我々が提供したいと考えている「モビリティ×エンターテインメント」を提供できたと感じています

試乗は大好評!自動運転の信頼性が高まっている手応えあり

──実証実験の結果はどうでしたか?

自動運転EVバスの試乗は大人気でした。2日目土曜日ともあって、多くの方が来場することとなり、急きょ増便したほどです。安全上セーフティドライバーは同乗していたものの手動運転による介入が必要なシーンはありませんでした。

乗車したお客様から自動運転に対する不安の声はなく、「完全にドライバーがいなくなっても安心して利用できそう」といった感想いただきました。以前は「誤作動するのでは?」と不安視する声も多かったのですが、自動運転の実証実験が各地で行われるにつれて、広く受け入れられるようになってきたと感じています。

MaaS実現への貢献を目指して、マクニカが今後取り組んでいくこと

──今後も、みなとみらい21地区での実証実験を行う予定ですか?

今回は他の車両が入ってこない限定エリアでの運行でしたが、次は一般車両も走行する状態で行いたいと思います2023年度は、みなとみらい21地区の公道での実証実験を目指しています。
移動時間を楽しくするための観光体験に関しても、関係者一同でアイデアも練っていますので、さらなる感動を生み出すコンテンツをお届けしたいですね。

移動をさらに便利にするための構想もあります。現在、みなとみらい21地区にはバスやタクシーに加えて、ロープウェイ(エアキャビン)や水陸両用バス(スカイダック)など多彩な移動手段があります。こういった交通機関と自動運転EVバスを連携させると、乗り換えがスムーズになり、駅から目的地まで待たされることなく快適に移動できるはずと考えております。

──それだけ多くの交通機関を、どうやって連携させるのでしょうか?

手段の一つが、実証実験でも使用した「マクニカ・モビリティ・データ・プラットフォーム(MMDP)の活用です。このシステムはマクニカの提供する自動運転車両だけでなく、すでにある交通機関にもマクニカのセンサーを搭載することで、遠隔で監視できます。一つのシステムでさまざまな交通機関を管理できるので、さまざまなシステム画面をいくつも見比べる費用がなく、管理者の負担を軽減させるメリットがありますこのようなシステム活用して、自治体や他企業・大学の皆さまと共創しながら、みなとみらい21地区や本社のある新横浜をはじめとして、全国の街づくりに関わっていきたい。それが、私たちマクニカの考えです。

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──その先の展望についても教えてください。

将来的な目標は、社会全体でのMaaS実現に貢献することです。そのためには、これまで以上にデータの活用が重要になります。自動運転車両には多種多様なセンサーが搭載され、常に周辺環境のデータを収集しており、これらのデータを自動運転以外に利用できたら、もっと便利になりますよね。例えば、道路の異常箇所を調べるとき、これまでは人がわざわざ現地に足を運んでいました。でも、自動運転車両が走りながら異常箇所を見つけられるようになれば、手間がかなり少なくなります。自動運転車両が取得したデータを地域課題の解決にも利用できる仕組みを構築していく予定です。

ほかに、モビリティとヘルスケアのソリューションを連携させる取り組みも始まっています。例えば、病院へ向かうバスの中で血圧や体温、ストレス状態などを測定します。データを病院に転送しておけば、着いたらすぐに診察を受けられます。このように、移動時間を有効に使える仕組みも開発中です。

マクニカが実現したいのは、誰もが安全安心で快適に、楽しく暮らせる社会です。今後も、 「新たな価値の創造」の2軸でモビリティソリューション事業に取り組んでまいります。

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