組織のアジリティを高めるスキル可視化の方法
DXで求められるアジャイルな組織・働き方の実現のため、従業員のスキルデータに注目が集まっています。一方、スキルの可視化には、さまざまな課題があり、効果的な成果が上がらないケースも多くあります。本記事では、それらの課題を紹介し、課題を解決するためのツールについて紹介します。
目次
- 産業革命以降のジョブ型から新たな組織パラダイム「脱ジョブ型」へ
- レガシーからエンゲージメント時代へと進化するHRテック
- 働き方改革のための組織作りをエンパワーするZipteam
- 直感的な手法で簡単かつ低コストにスキルを可視化
産業革命以降のジョブ型から新たな組織パラダイム「脱ジョブ型」へ
1987年に刊行されたソニー創業者である盛田昭夫氏の著書『MADE IN JAPAN - わが体験的国際戦略』の文中に、「テクノロジー、製品企画、マーケティングの三つの分野に独創性が発揮されてはじめて、消費者は新技術の恩恵に浴し得るのである。しかもそうした各分野の協同作業が効果的に行われるような組織体がない限り、ビジネスとしての結実を見ることはむずかしい」という一文があります。
ポイントは「各分野の協同作業が効果的に行われるような組織体がない限り」という部分で、それぞれの分野でイノベーティブになり、それが1つのパッケージになることで初めてビジネスとしてのイノベーションが生まれるということです。これは現在のDXでも同様で、イノベーションを実現するためには、R&D(研究開発)、オープンイノベーションという2つの手法とともに、組織・働き方改革という視点が不可欠になります
組織・働き方改革には、カルチャー、スモールチーム、イノベータ育成と支援の3つの取り組みが必要です。しかし現在の組織モデルは、イノベーションに最適なのでしょうか。例えば、日本企業のメンバーシップ型雇用は時代遅れであり、欧米企業のジョブ型雇用に移行すべきという議論があります。その一方で、欧米企業のジョブ型雇用にも同じ限界があります。
ジョブ型雇用は、社内のすべての仕事をジョブで管理し、ジョブとジョブに人を割りあてたジョブホルダーのセットで運用されます。このとき、人と仕事の関係が静的すぎて環境変化のスピードに追いつけない、分野横断的/アジャイルな取り組みと相性が悪いという2つの課題があります。
そこで注目されているのが、産業革命以降のジョブ型、および階層型組織に対し、新たな組織パラダイムである「脱ジョブ型」「フラット/ティール型」の組織です。脱ジョブ型の組織には、(1)ジョブのアンバンドリング、(2)ジョブホルダーのアンバンドリング、(3)スキルベースのマッチングの3つの特徴があります。
(1)ジョブのアンバンドリング
仕事は、「ミッション(自主経営する個により成り立つ)」「ジョブ(ジョブホルダーにより成り立つ)」「タスク(ギグワーカーにより成り立つ)」に分類されます。脱ジョブ型の組織では、スキルベースの組織を越境する働き方がポイントになります。ここで重要になるのが「スキル」で、ギグワーカーはスキルをベースにマッチングされます。
(2)ジョブホルダーのアンバンドリング
ジョブホルダーは静的な存在ですが、脱ジョブ型の組織では、個として「スキル」「興味」「経験」「モチベーション」の動的な属性をベースに仕事がマッチングされます。
(3)スキルベースのマッチング
ジョブ型の組織では、ジョブに人を割り当てるという考え方のため、静的・中央集権型で機動性が低いという課題がありました。脱ジョブ型では、人と仕事をスキルベースでマッチングすることで、動的・分散型で機動性高いメリットがあります。
脱ジョブ型の組織をまとめると、ジョブとジョブホルダーを切り離し、スキルベースの機動的な働き方を実現する組織モデルということになります。
レガシーからエンゲージメント時代へと進化するHRテック
HRテックは、レガシーシステムの人事情報システム(HRIS)時代から、現在のモバイル対応、ソーシャル対応などのエンゲージメント時代へと進化しています。その根底にあるのはスタティックなジョブ型モデルですが、今後ジョブ型モデルでスキルベースな働き方を実現するためには、スキルファーストなツールを採用することが重要です。
それではスキルとは何でしょうか。それを明らかにするためには、スキルを可視化することが必要です。しかしスキルの可視化は、容易ではありません。例えば、スキル可視化の一般的なフローは、以下の図のとおりです。
タクソノミー(分類)の作成で、各組織におけるスキルの意味を作り、従業員のデータを集めて、価値検証を行うという流れです。具体的には、スキルデータを統合し、クレンジング、基盤構築、スキル入力をして、テストをします。しかしこのフローは、あまりうまくいっていません。理由は、例えばひと言に「プロダクト」といっても、会社によって、その意味は大きく異なるからです。
このときの課題としては、大きく2つあります。(1)人事部門にとってタクソノミーの作成と運用が困難であること、(2)タクソノミーを作成できてもユーザーのスキル入力率が低いことです。
(1)タクソノミーの作成と運用が困難
これまでのスキルタクソノミーの手法では、中央管理的に100~200のスキルを定義して、会社全体のスキルを可視化していました。しかし変化が激しい現在、この手法は時代遅れになっています。理由は、木構造のデータモデルでは複雑化するスキルの関係性を記述することができず、中央管理では現場で使われるスキルに追いつけないからです。
(2)スキル入力率が低い
一般的にスキルの入力率は20~30%といわれています。表計算ソフトなどを利用して、100程度のスキルと成熟度のマトリックスに答えていくことが必要なため、社員は入力する気になりません。また入力するカテゴリも、スキルも、実際の現場との隔たりがあり、人事と現場のギャップが大きく、スキルに対する理解も得にくくなっています。
さらに、毎日、新しいツールやフレームワークなどが登場し、変化に適用できなくなっています。施策があってデータを集めるのではなく、スキルの入力により集まったデータで施策ができる「ニワトリが先か、タマゴが先か」といった状態であり、最初の段階で社員は入力のインセンティブを感じられません。
そこでテクノロジーの進化が必要であり、マクニカが提供する「Zipteam」のようなツールの活用がポイントになります。
働き方改革のための組織作りをエンパワーするZipteam
Zipteamの製品のコンセプトは、働き方を改革するための組織作りという、人事的な業務を行っている事業部門のマネジャーをエンパワーするツールの提供です。ただし、タレントマネジメントのような人事向けのツールではなく、チャットツールのようにスキルを管理できるツールを実現することがZipteamのアプローチです。技術的には、グラフを活用した独自のスキル管理手法により、スキルの可視化の課題を解決します。
Zipteamの利用者は、グラフで自分のスキルセットを入力することで、複数ユーザーのスキルグラフを集計し、チーム単位のグラフを作成できます。これにより、この人が抜けるとどうなるか、このプロジェクトのためにはどこにギャップがあるか、新規プロジェクトを開始するときに社内にどのようなエキスパートがいるのかなどを可視化できます。
組織単位で集計されたグラフは、タクソノミー(分類体系)として機能します。グラフのクラスタリングはAIの用法につながりますが、例えばPythonとウェブのノードつながりの強度を見ることで、AIが意味づけできます。
これにより、「このスキルは、このフォルダに入っているので、こういう意味である」といった中央管理的な手法ではなく、グラフと機械学習を使い、それ自体を動的にタクソノミーとして使えます。これにより最初の難関だったタクソノミーの課題を解決できます。
直感的な手法で簡単かつ低コストにスキルを可視化
自分のスキルを可視化できるとはいえ、誰が最初に入力するかというコールドスタート問題が残ってしまいます。またマネジャーがツールの導入を決めたら、部下のスキルを入力することも必要です。Zipteamは、マインドマップのような手法により、誰でもスキルグラフを直感的に作ることができます。職務経験に基づいて、自分の経験をフリーフォームで入力し、スキル同士をひもづけることで、自分のスキルセットを視覚的に表現することもできます。
マインドマップのように直感的にスキルを表現
さらに自分自身がエキスパートと働いて、そのエキスパートが高いスキルを持っていると感じたときに、ユーザー同士でスキルを追加し合うこともできます。どの人が、どのようなスキルを持っているかをタグ付けしておき、エキスパートサーチとセットで利用することで、ほかのユーザーが持っている知識、スキルへの容易なアクセスが可能になります。
ユーザ同士でのスキルの共同編集
スキルを共同で編集し、スキルベースのエキスパート検索が可能になることで、つながりのデータが蓄積され、新たな社員と出会える、ユーザーベネフィットにより駆動するフライホイールによる好循環が実現できます。コラボレーションツールのアプローチにより、スキルが入力されない課題を解決できます。
組織内のスキルを定義するタクソノミーは、セキュリティの観点からワークスペースごとに分離され、ユーザーがスキルを入力するたびに成長していきます。タクソノミーが成長することで、スキルによる社員検索が可能。グラフを採用しているので、同じPythonのエキスパートでも、機械学習が得意なのか、ウェブが得意なのかも容易に把握できます。
スキルによる社員検索
Zipteamは、クラウドサービス(SaaS)なので、セットアップが非常に簡単です。ワークスペースを作成し、ユーザーを招待するだけで利用を開始できます。セットアップができたら、個人単位でスキルを入力することで、エキスパートサーチやスキルベースのチーム構成などの価値をすぐに得ることができます。
Zipteamを利用するベネフィットは、大きく以下の4つです。
(1)組織の機動性の向上
チーム編成にデータドリブンなアプローチを導入し、組織の機動性を向上できます。
(2)高速学習
エキスパート検索を通して、ピアコーチングや社内メンターシップを浸透させ、社員の学び合いを促進できます。
(3)リテンション
スキルベースの社内モビリティプログラムをとおして、トップ人材を維持できます。
(4)PMIの円滑化
買収/合併する企業のスキルを可視化することで、M&A後の統合プロセスを円滑化できます。 これまでの手法は、HRISやLMSの追加機能であり、スキルタクソノミーの作成が複雑で、スキル入力のインセンティブに欠けているため、複雑で高コストになりがちでした。Zipteamであれば、スキルファーストな設計で、スキルタクソノミーの作成が不要、スキルデータ収集に特化したフライホイールにより、簡単かつ低コストでスキルの可視化を実現できます。
DXの推進や働き方を改革するための組織作りにおいて、組織や働き方の課題を組織レベルで感じている企業の人事的な業務を担っている事業部門のマネジャー、および担当者の皆さまをマクニカが支援します。