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自動運転の社会実装に欠かせない遠隔運行管理システム「Fleet Management System(FMS)」とは?

自動運転の社会実装に欠かせない遠隔運行管理システム「Fleet Management System(FMS)」とは?

最近では、ドライバーが行う「認知」や「予測」「判断」「制御」をシステムが代替することで実現する自動運転の世界が広がっていますが、実証実験で終わってしまうケースも多く、事故の削減や人材不足の解消、生産性の向上といった、課題解決を実現するような段階には至っていないのが実態です。本記事では、自動運転に関する現状の課題から、実際のビジネスにつなげていくために必要な仕組みづくりについて考えていきます。

目次

  • 市場拡大が大きく期待される自動運転の今
  • 自動運転プロジェクトの実態
  • 自動運転の社会実装に欠かせないFMSとその課題
  • マクニカが提供するFMSソリューション

市場拡大が大きく期待される自動運転の今

最近多くの自動車に自動運転技術が搭載されており、202211月現在では公益社団法人自動車技術会が示している自動運転レベル3となる条件付運転自動化が実装されている段階で、ドライバーには適切な対応が求められるものの、システムが全ての運転タスクを実施する段階にあることは、多くの方がご存じの通りです。ある意味で、自動運転は我々の生活に身近なものになってきており、遠くない未来には完全自動運転を実現することも可能になることでしょう。

そんな自動運転技術をビジネスや公共サービスのインフラとして用いる場面は増えており、官民挙げての実証実験が全国各地で展開されています。乗用車はもちろん、バスやカート、トラクター、無人搬送車(AGV)など、用途に応じたモビリティが用いられており、公共交通ネットワークに接続する商業施設、工場・プラント、空港、病院、テーマパークなど、いろいろなシーンで自動運転技術の検証が行われているところです。

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例えば福井県永平寺町では、遠隔監視・操作型の自動運転車による無人自動運転移動サービスの実証実験が行われています。国土交通省と経済産業省が連携し、周辺の交通状況を監視しつつ、道路に敷設した電磁誘導線上を最大速度 12km/h で自動走行する装置にて自動運転移動サービスの実現に向けた検証を行っています。

また、倉庫内での自動運転では、倉庫内の入出荷管理において、商品棚ごと運ぶ自動搬送ロボットを導入、ロケーションへの商品格納やピッキング業務などの省人化を通じて、業務効率化や働き方改革につながる自動運転に関する取り組みを進めています。他にもさまざまな自動運転に関するプロジェクトが進められており、多くのメディアでその取り組みを紹介した記事が散見されます。

この自動運転の市場については、商用車の運行を遠隔から管理する仕組みであるFleet Management SystemFMS)の市場規模予測からも将来的な広がりが期待できます。20222月に米調査会社のREPORTOCEANが発行した新しいレポートによると、2021年でのFMS市場規模は、世界全体で215億ドルに達しており、2022年から2030年までのCAGR(年間平均成長率)は10.7%の成長率と予測され、2030年には532億ドルに達する見込みとなっているのです。

労働人口が減少する大きな社会課題への対策として、省人化に貢献する自動運転は、多くの企業で取り組んでいくべき新たな挑戦となってくることは間違いありません。

自動運転プロジェクトの実態

ただし、そのプロジェクトの多くは道半ばの状況にあります。今後の成長が期待される自動運転分野では、実際に多くのプロジェクトが推進されているものの、自社の業務への展開含めて社会実装にまで至っているケースは現実的には少ないのが実態です。将来的な自動運転レベル45や完全無人化を見据え、各社が実証実験を行いながら、課題の抽出や解決するための技術開発など、実装に向けた検証を行っている段階にあるのが現状です。例えば、建設現場で活躍する大型ダンプトラックやロードローラーといった建設機械の自動運転化についてはかなり進んでいる部分もありますが、いまでも検証フェーズにあるプロジェクトが大半なのです。

自動運転の商用サービスが事業化できていない、もしくは自社の業務に組み込めていないのは、自動運転に必要なさまざまな環境要件が多岐にわたり、整備が追い付いていないためです。判断や制御といったソフトウェアやセンサーも含めた自動運転技術だけでなく、3Dマップの整備や遠隔からセンサー情報を収集するための5Gをはじめとしたネットワーク、そして遠隔からの運行管理を行うためのFMSなど、それぞれの仕組みを有機的につなぎ合わせながら、得られたフィードバックをもとに課題を解決していくことが求められます。

また、モビリティを組み合わせた、新たな価値を創出することも必要です。事業として採算を取って、持続的に自動運転が運行していける仕組みづくりなどを行うことで、実証実験からプロジェクトを前に進めていくことが可能になるのです。

自動運転の社会実装に欠かせないFMSとその課題

そんな自動運転を社会実装するために重要な基盤の1つに挙げられるのが、前述したFMSと呼ばれる仕組みです。遠隔運行管理システムであるFMSは、乗用車やロボット、AGV、ドローンといったさまざまなモビリティからリアルタイムにデータ収集し、遠隔での運行管理を実現する仕組みで、エッジとなる各モビリティから収集されたデータをクラウド上に展開する時系列データ基盤に格納し、得られた情報を分析、可視化することで遠隔からモビリティを制御します。

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FMSを使った遠隔運行管理システムは、地図情報と連動しながらリアルタイムに移動体の位置を把握し、適切な経路情報の表示や配車指示、モビリティの運行状況把握、経路上にある信号機などのインフラ情報の取得など、運用に合わせたアプリケーションの実装に注目されがちです。もちろんアプリケーションの作り込みは重要ですが、そもそもそれらのアプリケーションに対して、モビリティから得られた情報を正しく受け渡し、そしてモビリティに対して指示を出すための通信の仕組みがしっかりしていないと、リアルタイムな処理が求められる遠隔からの制御がうまく行われません。

FMSを活用して遠隔での運行監視や制御を実現するためには、モビリティから得られた情報を収集し、その情報を遠隔の管制室に確実に送り届けるための高品質な環境づくりが非常に重要です。そして、運用管理を行うためのデータプラットフォームに対しても、欠損なくデータを送り届けるための環境整備を行っていく必要があります。

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自動運転に限らず遠隔監視や制御を行う仕組みには、エッジからのデータをクラウド上のプラットフォームに集約していくIoTシステムがイメージしやすいところでしょう。このIoTシステムを遠隔監視や制御を行うための環境づくりに応用するためには、制御情報を確実にモビリティに受け渡し、その結果をデータプラットフォームへリアルタイムに届けるための技術が、十分考慮されているかどうかを見極める必要があります。

一般的なIoTシステムの場合、モビリティに搭載されたセンサーからの情報をメッセージブローカーが受け取ると、受信したことをモビリティに応答した後、得られた情報をデータストアに書き込みます。この場合、データストアへの書き込みに失敗してしまうと、データが欠損してしまい、データの信頼性を担保することができなくなります。

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マクニカが提供するFMSソリューション

データの信頼性とリアルタイム性をEnd-to-Endで両立するための仕組みを実装しているのが、マクニカが提供する遠隔運行管理システム(FMS)です。

マクニカのFMSは、MQTTといった一般的に広く利用されているプロトコルではなく、独自プロトコルによって、データの信頼性とリアルタイム性を両立する仕組みを提供します。具体的には、メッセージブローカーがデータ受信後、データストアに対してきちんと書き込みが行われたことを確認したうえで、モビリティに対して応答を返すことで、データの信頼性を向上させます。また、リアルタイム性を高めるために、データストアに書き込みを行う前に運行管理を司る管制室に対してデータ転送することで、リアルタイム性も両立させます。

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もちろん、自動運転車両をはじめ、建設機械やロボット、ドローンなど、モビリティを問わず対応できるのがマクニカのFMSソリューションです。モビリティから得られる情報だけでなく、信号機などのインフラ情報も含めて柔軟に取り込むことで、自動運転に必要な情報を統合・可視化することができるようになっています。

また、技術商社として常に最先端テクノロジーとインテリジェンスを世界中から調達しており、最適なパートナーと共創しながら、自動運転に関連するさまざまなソリューションを提供しています。地域の特性やユースケース、課題に合わせた最適な車両選択はもちろん、FMSなどのMaaS支援サービス、LiDARをはじめとする最先端センサー、自動運転ソフトウェア、車載向けコンピュータなどを組み合わせながら、コンサルティングから実証実験での検証、実装に向けた導入支援、導入後の運用まで、自動運転を社会実装するための一連のプロセスを併走しながら支援していく体制を整備しています。

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さらに、まちを走行するモビリティからリアルタイムな地域の動的データを収集し、地域のデータ連携基盤である都市OSに流通させることで、地域におけるリアルタイムなデータの利活用を実現する基盤の提供も可能です。地域課題の解決に向けたデータ駆動型の快適なまちづくり、いわゆるデータ駆動型スマートシティの実現を目指しています。

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具体的な事例としては、三重県四日市市との間で「次世代モビリティを活用したまちづくり連携協定」を締結し、新たなまちづくりにおいて自動運転モビリティを活用したサービス創出活動を実施しています。また、倉庫内AGV管理や配送ロボットサービスなど、顧客のニーズに応じた最適な自動運転のユースケースも提案可能です。ぜひ一度ご相談いただければと思います。

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