いざ技と知の金脈へ!
次世代テクノロジーを求むイノベーター向けメディア

AIは人と共存できるの?共存が上手く進む3つの秘訣とは

AIは人と共存できるの?共存が上手く進む3つの秘訣とは

日本で深刻な社会問題になりつつある「人手不足」。この問題への解決策として期待されているAI活用ですが、AIにより職を失うという懸念も生まれています。

特に、AIによってなくなる仕事として具体的な職業が挙がることもありますが、現在の技術ですぐにAIがすべてを代替できないと考える方も多いのではないでしょうか。

本記事では、完全な代替ではなく、まずはAIと人が上手く役割を分担することで「共存」が進んだ成功例について紹介します。さらに、プロジェクト進行方法の3つの秘訣についても解説します。

目次

そもそもAIと人は共存できる?

結論として、弊社はAIと人との共存はできると考えています。なぜなら、AIによってなくなる仕事とよく言われている「警備員」について、AIを用いた映像解析と上手く共存できた施設警備の事例があるからです。

一方で、上手く共存が進まない例もあります。

共存が上手くいかない3つの原因

AIとの共存が上手く進まない原因は、プロジェクトの進行方法に問題があることが多く、主に以下の3つが考えられます。

  1. 技術が正しく理解できないため、選定でつまずいてしまう

    世の中にはさまざまなAIを用いたサービスがある中で、何を選ぶのが適切か、何を基準に選べばよいか分からず、自社の課題に沿う物が選べないケースです。

  2. 実証実験まで進んだが、現場に受け入れられず実運用まで進められない

    実証実験(POC)で複数検証を行ったにも関わらず、現場を説得しきれなかったことで実運用に至らないというケースです。

  3. 実運用まで至ったが、導入が目的になってしまって具体的な効果が出ない

    こちらは上層部の声が強く、プロジェクトの担当者が導入することのみに注力してしまった結果、数値や金額の面で導入しても効果がほとんど出ないケースです。

3つの原因に対する対処の秘訣

3つの原因への対処は、それぞれ以下のように対応すると良いでしょう。

ai03_pic01.png

  1. "AIの役割"を理解して正しく選定を行う

    完璧にすべてをやってくれるAIは現時点で存在しません。AIができることや、人とどのように共存すれば最適な体制になるのか考えることが重要です

  2. "現場オペレーションの変革"で実運用をシミュレーションする

    AIの導入に限らず、新しいことを行う場合は現場の理解を得ることや、既存のオペレーション変更などが必要になります。細かい点まで今現在のオペレーションを把握して、現場サイドに寄り添うことで信頼を得られるようにすると良いでしょう。

  3. "導入目的・ROI"は検討段階で具体化する

    POCを進める段階になっても何を達成すべきか決められず、プロジェクトの進行へ影響してしまうことや、検証目的を達成してもシステム導入する理由の明確化がおろそかになっていることが意外と多いです。「導入」が目的にならないよう、予めしっかりと「どのような結果を期待したいのか」明確化しておきましょう。

共存の成功例:人材不足に悩む施設警備のシフト改革

施設警備の巡回・立哨業務を、AIを使った映像解析テクノロジーを導入したケースです。

このケースが上手くいった理由は2つあります。

ai03_pic02.png

ポイント1:技術のメリット、デメリットを正しく理解して選定した

想定される異常を学習させて検知する「事前学習型」と、現場のカメラごとに画素の塊の動きを学習させて、人の密集度や動きの方向などが普段と異なった場合に異常と判定する「画素ベース異常検知」の2種類の技術について採用を検討しました。

事前学習型は特定の事象を学習して認識するため、事前に定義した対象のみを検知します。そのため、使用要件が限定されやすく、汎用的に活用しにくい、かつ持続可能な運用が難しいという課題があります。

一方で画素ベースの異常検知は、事前学習型の課題をカバーすることができます。通常と異なる状態をシステム側で検知し、監視員にて何が起こっているか判断する運用で、多数のカメラからさまざまな事象を検知でき、幅広い状況認識が可能となります。
さらに、運用上の設定調整がほぼ必要ありません。

このような特徴から、前例のない異常が起きた場合でも異常が発生したことを検知できるため、巡回・立哨業務の業務と非常に相性の良い技術を選ぶことができました。

  事前学習型 "画素ベース"異常検知
手法 特定のモノ・事象を学習、認識し検知 画素の動きを学習、通常と異なる映像を検知
検知内容
  • "事前に定義した対象"のみを検知(人物、車両、侵入、混雑、暴力、火災など)
  • 検知した事象が何かを識別
  • "通常と異なる状態"をすべて検知
    (人が異常と定義しないものも含む)
  • 検知した事象が何かは識別しない
運用
  • 事前に検知したい対象を特定
  • 検知したい対象ごとに環境や設定を調整
  • 外部環境や要件の変更に都度対応
  • 常時監視したい場所を選ぶ
  • カメラの接続可否、画角などを確認
  • 環境変化に自動適応
有用性
  • 要件が限定されやすく、汎用的に活用しにくい
    (想定外の事象や環境変化への対応が難しい)
  • 持続可能な運用が難しい
    (機能・カメラ追加や精度維持で都度調整が必要)
  • 多数のカメラで様々な事象を検知でき、幅広い状況認識ができる
    (検知映像を人が確認する運用により、効率的に常時監視)
  • 運用上での設定調整等はほぼ必要なし
    (自動学習で常にアップデート、カメラ追加も容易)


ポイント2:人とテクノロジーで明確な役割分担を行った上でPOCに進んだ

ポイント1で正しくテクノロジーを理解したことで、人との役割分担が明確に行えました。

例えば、抑止の観点では、やはり人が立っている方が不審者に対する抑止効果は高いため、高いセキュリティ性が求められるエリアに対しては人がしっかりと立哨・巡回をすることになりました。ただし、「異常を察知する」という点に関しては、巡回や立哨だと五感で様々なことに気が付ける代わりに、警備員が巡回する場所やタイミングでしか発見できません。

こういった人のリソースを割かなければできないことは、施設内に設置した多数のカメラに検知を任せることで、人とテクノロジーの得意分野をそれぞれ活かす分担を行いました。

  巡回/立哨警備 異常検知
抑止 警備員のいる場所・タイミングで
存在による抑止効果
監視カメラの存在、早期対応の繰り返しによる抑止効果
異常予兆への対応による未然防止
検知傾向分析による恒久対策
異常察知 警備員のいる場所・タイミングで
五感で様々な事象を発見
多数カメラを用いて
広い範囲で常に様々な事象を検知
対応 発見後に即対応指示を受けて駆け付け 発見後に警備員に対応指示検知履歴をもとに
事後の映像確認検知傾向分析による恒久対策

まとめ

AIと人の共存可否は、これから技術が進歩することで更に議論が生まれるでしょう。将来的に無くなると言われる職業も、現在の技術では完全な代替は難しいため、1つずつ課題をクリアしていく必要があります。その課題をクリアしていくために、今回ご紹介した共存を上手く進める3つの秘訣について、皆様のプロジェクト進行へ活かしていただければ幸いです。

MET2022のセッション"人材不足に悩む業界のシフト改革 ~「AIと人が共存できた」映像解析テクノロジー導入までの軌跡~"では、今回紹介した例以外にも、大手ディベロッパー様にてAIとの共存が進んだ事例を紹介しています。以下からセッション資料がダウンロードできますので、プロジェクトの進め方に悩みや不安をお持ちの方は、ぜひこちらも参考に自社のAI導入へご活用ください。

\本記事の内容を、動画でご視聴いただけます/

動画を見る.jpg